「一般貨物自動車運送事業の許可を取得したいけれど、実際に営業を開始できるまでどのくらいかかるのだろう?」
このような疑問をお持ちの方は多いと思います。
一般貨物自動車運送事業は許可制であり、貨物軽自動車運送事業の届出制とは異なり、取得するまでに多くの時間と労力が必要となります。
営業所や車庫の確保、申請書類の作成、役員法令試験など、いくつかのステップを経る必要があります。
この記事では、一般貨物自動車運送事業の許可取得までにかかる期間と、申請から開業までの流れについて解説します。
許可取得までの目安は4~6ヶ月程度
一般貨物自動車運送事業の新規許可は、申請から許可取得までおおむね4~6ヶ月程度かかります。
国土交通省では、一般貨物自動車運送事業の新規許可申請に係る標準処理期間を「3~5ヶ月」としています。
しかし、この標準処理期間は、申請書類が適正に提出されていることを前提とした期間であり、申請内容の補正や追加資料の提出に要する期間は含まれていません。
そのため、実際には運輸局から補正指示を受けたり、追加資料の提出を求められたりするケースもあることから、許可取得までの期間は4~6ヶ月程度を見込んでおくのが一般的です。
なお、この期間はあくまで申請書を運輸支局へ提出してから許可が下りるまでの目安です。
営業所や車庫の確保、資金計画の準備などの事前準備期間を含めると、開業までにはさらに時間がかかる場合があります。
準備期間を含めると1年近くかかる場合も

先ほど、一般貨物自動車運送事業の許可取得までの期間は「4~6ヶ月程度」とお伝えしましたが、これはあくまで申請書を運輸支局へ提出してから許可が下りるまでの目安です。
実際には、申請前に次のような準備が必要となります。
- 営業所の選定
- 車庫の確保
- 資金計画の作成
- 必要書類の収集
- 運行管理者・整備管理者の確保
- 車両の準備
など、これらの準備をスムーズに進めることができれば問題ありませんが、現実には思うように進まないケースも少なくありません。
特に、運行管理者や整備管理者の資格を有する人材の確保や、運送業の許可要件を満たす営業所・車庫物件の選定に時間を要することが多くあります。
また、一般貨物自動車運送事業の許可では、事業開始に必要な資金を保有していることを証明しなければなりません。事業計画によって異なりますが、一般的には1,500万円~2,000万円程度の資金が必要になるケースが多いとされています。
自己資金だけで準備できない場合は、金融機関からの融資を検討することになりますが、融資の申込みから実行までにも一定の期間を要します。
そのため、物件探しや人材確保、資金調達に時間がかかった場合には、準備開始から実際に営業を開始できるまで1年近くかかるケースも珍しくありません。
「できるだけ早く開業したい」と考えている場合は、開業予定時期から逆算して、余裕を持って準備を進めることが重要です。
一般貨物自動車運送事業の許可取得までの流れ

一般貨物自動車運送事業の許可取得までの一般的な流れを解説します。
使用車両及び営業所・車庫の選定
一般貨物自動車運送事業の許可を取得するためには、営業所や車庫が一定の要件を満たしている必要があります。
主な要件としては、
- 営業所が運送業の営業所として使用できる物件であること
- 車庫が適切な場所に確保されていること
- 車庫の前面道路が必要な幅員を満たしていること
などが挙げられます。
実際には、物件を契約した後になって「運送業の営業所として使用できなかった」「前面道路の幅員が不足していた」と判明するケースも少なくありません。そのため、物件を契約する前に要件を確認することが重要です。
特に見落とされやすいのが、車庫の前面道路に関する要件です。
必要な道路幅員は使用する車両の大きさによって異なるため、「今使う車両」だけでなく、「将来的に導入予定の車両」も見据えて物件を選定する必要があります。
後になって大型車両を導入したくても、前面道路の要件を満たせず増車ができないというケースもありますので、営業所や車庫の選定は慎重に行うことをおすすめします。
全面道路の要件に関しては、以下の記事でも解説しています。
人材の確保の計画
一般貨物自動車運送事業を開始するためには、必要な人員を確保する計画を立てる必要があります。
具体的には、
- ドライバー(運転者)
- 運行管理者
- 整備管理者
などの人材を確保しなければなりません。
貨物軽自動車運送事業のように1人で始めることができません。
一般貨物自動車運送事業では、運行管理者1人・整備管理者1人及び運転手5人を確保しなければ開業することはできません。
運行管理者と整備管理者は兼任することが可能ですが、それでも6人の人材が必要になります。
特に運行管理者や整備管理者については、資格要件や選任要件があるため、許可取得後に慌てて探すのではなく、申請準備の段階から採用計画や配置計画を検討しておくことが重要です。
資金計画の準備
一般貨物自動車運送事業の許可を取得するためには、事業を安定して運営できるだけの資金を保有していることを証明しなければなりません。
必要資金は、人件費・車両費・燃料費・修繕費・保険料などの項目について、6ヶ月分または12ヶ月分の支出見込み額を算出し、その合計額によって判断されます。
特に人件費は大きな割合を占めるため、ドライバーや運行管理者などの人員計画によっては、人件費だけで数百万円規模となることも珍しくありません。また、車両を購入する計画の場合には、車両費用が加算されるため、事業計画によっては必要資金が数千万円に及ぶケースもあります。
そのため、許可申請にあたっては、車両購入費用や保険料などを含めた資金計画を作成し、残高証明書などによって必要資金を確保していることを証明する必要があります。
なお、自己資金だけで準備することが難しい場合は、金融機関からの融資を活用するケースもありますが、融資の審査や実行には一定の期間を要するため、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。
必要書類の作成と取得
一般貨物自動車運送事業の新規許可申請では、多くの書類を作成・収集する必要があります。
主な書類としては、
- 一般貨物自動車運送事業経営許可申請書
- 事業計画書
- 事業用自動車の運行管理及び整備管理体制(様式1-1)
- 運転手の確保計画(様式1-2)
- 事業開始に要する資金及び調達方法(様式2)
- 金融機関の残高証明書
- 通帳のコピー(1回目残高証明から2回目残高証明までの間分)
- 営業所・車庫の周辺地図
- 営業所・車庫間の直線距離を示す地図(営業所と車庫が離れている場合)
- 平面図(営業所・睡眠休憩施設、車庫)
- 求積図(営業所・睡眠休憩施設、車庫)
- 営業所・車庫などの使用権限を証明する書類(賃貸借契約書や登記簿謄本など)
- 営業所・睡眠休憩施設、車庫の写真
- 幅員証明(全面道路が国道の場合は不要)
- 用途地域を証明するもの
- 車両の使用権限を証する書類
- 会社の定款
- 法人登記簿謄本
- 直近の貸借対照表
- 役員または社員全員の履歴書及び名簿
- 戸籍抄本(個人事業主の場合)
- 宣誓書(欠格事由・法令遵守)
- 運送委託契約書(利用運送をする場合)
- 委任状(代理申請の場合)
これらの書類の中には取得するだけで済むものもありますが、多くは運送事業の許可要件を踏まえて作成しなければなりません。
特に、営業所・睡眠休憩施設・車庫の平面図や求積図は、許可要件を理解したうえで作成する必要があり、慣れていない方にとっては難易度の高い書類の一つです。
また、車庫の配置図では車両間の間隔や出入口の状況、営業所と車庫の位置関係なども確認されるため、図面の不備によって補正を求められるケースも少なくありません。
書類の作成や収集に時間がかかることも多いため、許可申請を予定している場合は早めに準備を進めることをおすすめします。
許可申請
一般貨物自動車運送事業の新規許可申請は、営業所を管轄する運輸支局の輸送部門に対して行います。
大阪府での新規許可申請は寝屋川市にある大阪運輸支局で行います。
役員法令試験の受験
役員法令試験とは、一般貨物自動車運送事業の許可申請において、申請者(法人の場合は常勤役員)が法令知識を有しているかを確認するための試験です。
役員法令試験は、許可申請書を運輸支局が受理した後の最初の奇数月に行われます。
例えば、7月に許可申請書を出して受理された場合、9月に役員法令試験を受験することになります。
一般貨物の役員法令試験の通知は、通常、運輸支局で許可申請が受理された後、試験日の約10日前までに「法令試験実施通知書」として申請者へ郵送されます。
役員法令試験についてはこちらの記事でも解説しています。
許可証交付式・登録免許税の納付
一般貨物自動車運送事業の許可が下りると、運輸局から許可証の交付に関する案内が届きます。
地域によっては許可証交付式や説明会が開催されることがあり、代表者または運行管理者等が出席して許可証を受け取ります。
許可証の交付時には、登録免許税の納付に関する案内も行われます。
登録免許税は、一般貨物自動車運送事業の許可を受けた事業者が国に納付する税金であり、金額は全国一律で12万円です。
納付書を受け取った後、金融機関や郵便局などで納付手続きを行います。
なお、登録免許税は許可証の交付日から1か月以内に納付しなければなりません。
期限内に納付が行われない場合、その後の手続きに支障が生じる可能性もあるため、許可証を受け取ったら速やかに納付することをおすすめします。
運行管理者・整備管理者の選任届
一般貨物自動車運送事業では、許可取得後に運行管理者および整備管理者の選任届を提出しなければなりません。
なお、運行管理者や整備管理者は、許可申請時点で確保できていなくても、確保予定として申請を行うこと自体は可能です。
しかし、運送事業の許可が下りたとしても、運行管理者・整備管理者の選任届を提出できなければ、その後の緑ナンバー取得手続きへ進むことができません。
そのため、
- 運行管理者として予定していた人が退職した
- 資格を持つ人材の採用が間に合わなかった
- 運行管理者の試験に合格できなかった
といった理由で人材確保ができなくなると、せっかく許可を取得しても営業を開始できないという事態になってしまいます。
実際には、許可申請よりも運行管理者や整備管理者の確保に苦労するケースも少なくありません。
特に新規参入の場合は、営業所や車庫の選定だけでなく、人員計画についても早い段階から検討しておくことが重要です。
「許可が下りればすぐに緑ナンバーを取得できる」と考えている方もおられますが、運行管理者・整備管理者の確保状況によっては、許可後に数ヶ月間開業できないケースもありますので注意が必要です。
保険加入と運輸開始前確認報告
一般貨物自動車運送事業では、許可取得後に事業を開始するための準備として、労働保険および社会保険への加入手続きを行う必要があります。
その後、運輸開始届を提出する前の手続きとして、「運輸開始前確認報告」を行います。
この運輸開始前確認報告では、営業所や車両の準備状況だけでなく、運転者を含む従業員が適切に労働保険・社会保険へ加入しているかについても確認されます。
特に注意が必要なのは、運転者の社会保険加入状況です。
運輸支局において社会保険への加入が確認できない場合、事業用自動車の登録に必要な連絡書が発行されません。
連絡書が発行されなければ、車検証の取得や緑ナンバーへの登録手続きを進めることができないため、運送事業を開始することができません。
そのため、許可取得後は車両の準備だけでなく、労働保険・社会保険の加入手続きについても計画的に進めることが重要です。
「許可が下りたらすぐに営業できる」と考えられがちですが、実際には保険加入や運輸開始前確認報告などの手続きが残っているため、開業までには一定の準備期間が必要となります。
事業用自動車等連絡書の発行・緑ナンバーの取得
運輸開始前確認報告を行い、必要な要件を満たしていることが確認されると、「事業用自動車等連絡書」が発行されます。
この連絡書は、事業用自動車として登録するために必要な書類であり、これがなければ緑ナンバーの取得手続きを行うことができません。
許可が下りていても、事業用自動車等連絡書が発行されるまでは事業用車両として登録することができないため、実際に運送事業を開始することもできません。
事業用自動車等連絡書の発行後は、運輸支局等において車両の登録手続きを行い、緑ナンバーを取得します。
なお、緑ナンバーについても自家用車と同様に希望番号制度を利用することができます。
希望するナンバーがある場合は、登録手続きに合わせて事前に申し込んでおくとスムーズです。
運賃料金設定届・運輸開始届の提出
緑ナンバーの取得や社内体制の整備が完了したら、いよいよ運送事業を開始することができます。
事業開始後は、運輸支局に対して「運輸開始届」と「運賃料金設定届」を提出しなければなりません。
運輸開始届は、実際に事業を開始したことを運輸支局へ報告するための届出です。
届出書には事業用自動車として登録した車両番号などを記載し、事業用車両の車検証の写しや任意保険証券の写しなどを添付して提出します。
運賃料金設定届は、事業で適用する運賃および料金を届け出るための書類です。
届出書には営業開始日などを記載し、実際に適用する運賃料金表を添付して提出します。
スムーズな事業開始を行うには
一般貨物自動車運送事業では、新規許可を取得するために多くの準備や調整が必要になります。
許可を取得すえばすぐに事業を始められると思いがちですが、実際には許可取得後から事業開始までの期間にも、多くの手続きや準備を進めなければなりません。
例えば、
- 運行管理者・整備管理者選任届
- 労働保険・社会保険への加入
- 車両の登録
- 任意保険への加入
- 運輸開始前確認報告への対応
など、事業開始までに行うべき事項は数多くあります。
特に注意したいのが、人材確保や車両準備に関する問題です。
許可申請時には「運行管理者をこの人にお願いする予定」「この車両を導入する予定」と計画していても、実際には採用がうまくいかなかったり、車両の納車が遅れたりするケースがあります。
その結果、許可は取得できたにもかかわらず、運輸開始前確認報告を完了できず、事業を開始できないという事態に陥ることもあります。
また、一般貨物自動車運送事業の許可には、許可取得後1年以内に事業を開始しなければならないというルールがあります。
そのため、許可取得後も事業開始ができない状態が長期間続くと、最悪の場合には許可取消しの対象となる可能性があります。
一般貨物自動車運送事業の新規参入では、許可取得そのものに目が向きがちですが、本当に重要なのは「許可取得後に確実に事業を開始できる体制を整えておくこと」です。
想定どおりに進まないケースも見据えながら、人材確保や車両調達に余裕を持たせるなど、リスク管理を行いながら準備を進めることが、スムーズな事業開始への近道といえるでしょう。
まとめ
一般貨物自動車運送事業の許可取得までの期間は、申請から許可までおおむね4~6か月程度が目安です。
ただし、営業所や車庫の選定、資金計画の準備なども含めると、開業までには1年近くかかるケースも珍しくありません。
特に物件選びを誤ると大幅なスケジュール遅延につながるため、契約前の確認が重要です。
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