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成年後見制度とはどういったものかを詳しく解説

成年後見制度とは

”成年後見制度”という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害でなどで判断能力が衰えた方を支援するために定められた国の制度をいいます。

では、成年後見制度を利用しなければならいない状況とはどういったときなのでしょうか。
また、成年後見制度を利用することによりどういったメリットがあるのでしょうか。

この記事では、成年後見制度について分かりやすく解説します。

この記事を読んで欲しい人

成年後見制度について知りたい方

 

成年後見制度についての基本的なこと

成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が衰えた方を支援するために定められた国の制度で、家庭裁判所の監督のもと、支援者が本人に代わって財産を管理し、契約等の締結を代わりに行なったりと、本人を保護・支援する制度です。

成年後見制度は平成11年12月の民法改正により、それまでの禁治産および純禁治産の制度が廃止され、平成12年4月より施行されました。

成年後見制度は、成人であるが、身体的または精神的な理由で判断能力が制限されている人々を対象とします。
未成年の場合、親権者が法定代理人となります。また、何らかの理由により親権者が不在となった場合の未成年を保護する制度として未成年後見制度というものがあります。

成年後見制度は「成人」が対象。未成年の場合は未成年後見制度がある

成年後見制度の種類

成年後見制度は、「法定後見」と「任意後見」の2種類に分けられます。
さらに、法定後見は、判断能力に応じて「後見」「補佐」「補助」の3種類に分けられます。

補佐の説明
補助の説明


判断能力を欠く状態や不十分な状態とは、判断能力が何らかの要因で衰えてしまっているという状態です。
それは自分が置かれた状態や行動を正しく認識し、適切な判断を行うことが難しい状態とも言えます。

代表的なものとしては、認知症による判断能力の低下があります。
一般的な認知症の程度でいうと、以下のように区分されます。

認知症の方や判断能力が衰えてしまった方の中には、日常生活もままならない方もいれば、日常生活には支障ないが自分の財産を管理できないといった方まで様々いらっしゃいます。
そこで後見制度では、判断能力の程度によって、「後見」「補佐」「補助」の3種類に分けられているのです。

法定後見と任意後見の違い

「後見制度」と聞くと、成年後見を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
成年後見は、補佐や補助と同じく法定後見の一つとなります。

法定後見と任意後見の違いは『現に判断能力が低下しているかどうか』というところにあります。
法定後見が判断能力が衰えてしまった方を支援・補助する制度なのに対し、任意後見は元気なうちに判断能力が低下してときのための支援・補助の契約を結ぶといったものになります。


任意後見は,本人の判断能力が不十分な状態になった場合に,本人があらかじめ締結した契約 )に従って本人を保護するものです。

契約ですので、本人の判断応力が不十分になった場合に代理人となる任意後見人を自分で選ぶことができます。任意後見人となる人の報酬額も契約で決めることになります。

一方で、法定後見はというと、代理人となる人(後見人等)や後見人等への報酬は家庭裁判所が決定することになります。

ただ、無作為に後見人等を決定するというわけではなく、申立書に候補者を書く欄があり、『この人を代理人にしたい』といった一定の要望をすることができます。しかし、本人の財産や状態によって、候補者欄に記入した人が後見人などにならない場合もあります。

後見人になるのに特別資格は必要ない

「成年後見人」「保佐人」「補助人」になるのに特別資格は必要ではありません。
法定後見の場合、申立書に候補者を記載しますが、親族を記入される方が多いのではないでしょうか。

当然、気心の知れた親族に保護・支援してもらえれば良いですが、親族が遠方であったり、面倒を診てくれる親族がいない場合もあります。さらには、財産管理額が多い場合などは、弁護士や司法書士などの専門家が後見人に選任されたり、後見監督人に選任されることがあります。

裁判所の成年後見関係事件の概況】の令和4年のデータでは、全体の19.1%が親族が後見人等(成年後見人、保佐人及び補助人)に選任されています。言い換えれば、8割以上のケースでは親族以外の方が後見人等に就任していることになります。

後見人等になるのに特別な資格は必要ありませんが、後見人等になることができない欠格事由が民法で規定されています。

未成年者

法定代理人(後見人)、保佐人または補助人の地位を家庭裁判所から解任された者

破産して復権を得ない者

本人に対して訴訟をし、またはした者ならびにその配偶者及び直系血族

行方の知れない者

以上の者は、後見人等になることはできません。

成年後見人等の報酬

家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができるものとされています(民法862条)

具体的に後見人等の報酬がいくらと法律で決まっているわけではありませんが、「成年後見人、保佐人、補助人の場合成年後見人等が、通常の後見等の事務を行った場合の報酬は、財産管理額が5000万円以下の場合、月額1万円~2万円程度が相場」のようです。

財産管理額が5000万円を超える場合は、月額2万円〜3万円が目安とされています。
また、後見監督人などが選任された場合、後見監督人等の報酬は月額5千円〜2万円程度に決定されることが多いようです。

「成年後見人」「保佐人」「補助人」の報酬額は月額2万円前後が相場。後見監督人が選任された場合、その報酬額も必要

法定後見制度の利用方法

法定後見制度を利用したい場合、管轄の家庭裁判所に成年後見人等選任の申立てを行う必要があります。
申立てができる人は、本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、成年後見監督人等、市区町村長、検察官と決まっています。

4親等内の親族には、本人から見て、「叔父」や「いとこ」も含まれます。

親族説明図

成年後見人等選任申立てまでの流れ

申立てには必要な書類があります。まずは必要な書類を準備することから始めます。

書類の種類書類の取得場所
後見の申立て書記入が必要な書類については
裁判所のHPにて入手が可能

申立て事情説明書
親族関係図
親族の意見書
後見人等候補者事情説明書
財産目録
収支予定表
本人情報シート
戸籍謄本本籍地の市区町村役場
住民票又は戸籍附票各1通住所地・本籍地の市区町村役場
成年後見等の登記が既にされていないことの証明書1通法務局(郵送で取得の場合は東京法務局)
本人の健康状態に関する資料 (備考)介護保険被保険者証、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳などの写しなど
診断書主治医の方に作成してもらうもの
書式に関しては専用のもの。裁判所HPにて入手が可能
🔴主に必要な書類(後見の場合)

書類が用意できれば、家庭裁判所に申立ての予約を行います。予約は基本的に電話で行います。
予約した日時に家庭裁判所に行き、面接を受けます。面接は、「申立人」と「後見人候補者」は必ず行く必要があります。

申立てを行なってから、家庭裁判所による審査があります。この際に、家庭裁判所が必要と判断すれば鑑定があります。
鑑定とは、本人の判断能力がどのくらいなのかを医学的に判断するための手続きです。

全ての申立てにおいて、鑑定が必要となるわけではありませんが、鑑定が行われる場合、審判が下りるまでの時間は通常より長くなり、鑑定費用も必要となります。鑑定費用は一般的には5万円から10万円程度とされています。

調査が終われば、家庭裁判所は、成年後見等の開始の審判をするとともに最も適任と思われる方を成年後見人等に選任します。家庭裁判所から「審判書」が申立人・本人・成年後見人に送られてきます。

審判書到着後2週間は不服申立て期間となりますが、後見人の選任に対しての不服申立てはできません(例えば、息子を後見候補者として申立てしたのに、弁護士が後見人に選任されたので不服申立てするなど)

2週間の不服申し立て期間を経過すると、正式に後見人が就任することになります

一般的な申立ての流れ
一般的な申立ての流れ

成年後見制度の利用を検討するときとは

成年後見制度がどういったことかお分かりいただけたかと思いますが、では、どういった状況の場合に成年後見制度の利用を検討しているかを一般的な具体例で見ていきましょう。

01親の預金を解約して老人ホームの費用にしたいが、親が認知症で解約できない

02親が亡くなって遺産相続協議を行わなければいけないが、相続人の中に認知症の方がいる

03一人暮らしをしている親の判断能力が衰えてきた。悪質な高額詐欺に引っかからないように予防したい

04母が所有している不動産が空き家になっており売却したいが、母が認知症になってしまった

成年後見制度の利用を検討される場合には、『不動産の売却』や『銀行預金の解約』などが認知症のために本人ができなくなり、代理で手続きをする必要がある場合が考えられます。
また、一人暮らしをしている親が、悪質な詐欺被害に遭わないように、利用を検討される方も多いのではないでしょうか。

法定後見は、現状で問題を抱えている方が利用を検討される制度です。理由は事情により変わってきますが、成年後見制度を正しく理解し利用を検討する必要があります。

成年後見制度の注意点

成年後見制度は、『判断能力の衰えた方を”保護・支援”する制度』であるということは前述した通りです。

しかし、実際には、親の預金を解約したいが親が認知症で、『成年後見人をつけてください』と銀行に言われたため成年後見制度の利用をする。でも、『預金が解約できたら成年後見人も解約しようと思っている』という方も少なからずいらっしゃいます。

ここで注意すべきことが、成年後見制度では途中解約というものはありません。

成年後見制度を使い続ける限り、成年後見人(法定後見人)が死亡しても、解任されても、辞任しても、新しい成年後見人(法定後見人)が選任されます。 成年後見制度は、原則としてやめることができません。

成年後見制度をやめることができるのは、本人の判断能力が回復したとき、または本人が亡くなったときとなります。

よって、成年後見制度を利用するのは、いっ時の問題解決(銀行預金を解約するや不動産を売却するなど)のためではなく、判断能力が衰えてしまった方の支援・保護のためであるということに注意する必要があります。

成年後見制度は、途中でやめることは原則的にできない

まとめ

この記事では、後見制度について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
後見制度には、法定後見と任意後見とがあり、それぞれ違うものであるということがお分かりいただけたかと思います。

法定後見制度の利用を検討さえる時に、ある問題解決のため利用を検討されるはずですが、注意しなければいけないのは、成年後見制度は途中でやめることはできないということです。

成年後見制度を正しく理解し、利用することが大切です。

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