運送業(一般貨物自動車運送事業)では、運送業許可を取得した当初から何かしらの変更があった際に、運輸局にその旨の書類を提出しなければなりません。
それには、事業計画変更認可申請のいるものと事業計画変更届出がいるものに分かれます。
認可や届出という言葉自体は聞いたことがある方も多いと思いますが、それぞれの違いがよく分からないという方も多いかもしれません。
この記事では、認可と届出の違いとともに、事業計画変更認可申請が必要な変更事項、届出が必要な変更事項を解説します。
認可と届出の違い
行政に対して行うことで「許認可」や「許可」「認可」「届出」といった言葉を聞いたことがあっても、それぞれの意味の違いはなかなか理解できないものです。
「認可」も「届出」も行政に対して行うものですが、要件の厳しさなどが変わってきます。
認可とは、国や地方自治体が、事業者からの申請があったとき、ある一定の基準を満たしているのを認めることです。
基準を満たしていれば、必ず認可されますが、認可を得るには事前に申請を行う必要があります。
一方で、届出はというと、国や地方自治体に対して、一定の事項の通知をする行為をいいます。
認可のように、事前に申請が必要ということはありません。
イメージでいうと、認可は『このようなことだから認めて』と申請をだし、行政庁が『いいよ』や『ここが条件満たしてないからダメだよ』といった判断をする感じです。
届出は、『このようなことだから届け出るね』と届け出て、行政庁は不備がないか確認し、受け取ったときに届出完了となるものです。
届出 行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう
行政手続法第2条7号
⚫︎認可は事前申請が必要
⚫︎届出は事前申請は不要
⚫︎認可は申請して条件を満たしていれば申請事項を認めてもらえる
⚫︎届出は行政が受理した時点で完了となる
運送業で事業計画変更認可申請が必要なもの
一般貨物自動車運送事業で変更があった際に、変更の認可申請が必要なものを解説します。
車庫の新設・移転・廃止
車庫の新設・廃止・移転は事業計画変更認可申請を行う必要があります。
運送業の車庫にする土地には様々な要件があり、その要件に適合していることを申請し、行政庁(運輸局)で適合していると認められれば、認可が下り車庫として使用することができるようになります。
運送業の車庫の要件は過去記事にて解説していますので、ご参考にしてください。
営業所の新設・移転・廃止
営業所を新設・移転・廃止するには事業計画変更認可申請が必要になります。
ただし、最小行政区域内での営業所の位置の変更は認可申請ではなく、変更届出となります。
運送業の営業所として認められるには、「立地」「使用権限」「車庫との距離」など、いろいろな要件があります。
運送業の営業所としての要件を満たしていないと、事業計画変更の認可が下りず、営業所として使用することはできません。
運送業の営業所の要件は過去記事にて解説していますので、ご参考にしてください。
事業用自動車の種別の変更
一般貨物自動車運送事業における事業用自動車の種別とは、貨物自動車運送事業法施行規則第2条3に「霊きゅう自動車又は普通自動車」と記載されております。
「認可申請が必要となる事業用種別の変更」というのは、例えば、トラックやバンなどの普通自動車で運送事業を行なっていたものを、霊きゅう自動車を導入するといったように、種別の違う自動車の変更が対象となります。
貨物利用運送をする
貨物利用運送とは、他者からの運送依頼に応じるため、自らが運送責任を負って、運賃及び料金を収受し、他の実運送事業者(トラック、船舶、航空、鉄道)を利用して行う貨物運送のことをいいます。
第一種貨物利用運送を始めるには、国土交通大臣の行う登録を受けなければなりません。
ただし、一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業を現に経営する者は、登録を行うのではなく、利用貨物運送の事業計画変更認可申請を行う必要があります。
したがって、今まで自社のトラックでしか運送していなかった事業者が、他の実運送会社を利用して運送を行う場合、利用貨物運送を行う旨の変更認可申請が必要となるわけです。
事業計画変更認可申請で利用貨物運送事業を始める場合、委託先の会社は実運送会社でなければなりません。
したがって、委託先の会社が第一種貨物利用運送事業者(トラックを持っていない会社)である場合、一般貨物自動車運送事業者であっても、第一種貨物利用運送事業の登録を行う必要があります。
一般貨物自動車運送事業者が実運送会社に委託する場合の利用運送
>>>事業計画変更認可申請が必要
一般貨物自動車運送事業者が第一種貨物利用運送事業者に委託する場合の利用運送
>>>第一種貨物利用運送事業の登録が必要となる
事業用自動車の数の変更(基本台数を下回る場合)
トラックなどの事業用自動車の増車や減車というのは、定期的に発生することですが、条件によっては変更認可申請が必要になります。
事業用自動車の数の変更は、基本的には変更届出で済むのですが、減車により基本台数である5台を下回る場合は事業計画変更認可申請が必要になる場合があります。
例えば、今までトラック5台で事業していた事業者が、1台減車処理をする場合は事業計画変更認可申請が必要になるということです。
基本台数(5台)を下回る変更は原則として認められません。
ただし、災害や事故などにより車両が使用不能になり、代わりの車両が確保されるまでなど、車両を5台以上に戻す具体的な計画がある場合に5台未満となる減車の申請がは可能です。
経営上の都合や、車両を5台以上に戻す計画がない場合、5台未満となる減車の申請はできません。
事業用自動車が減車により基本台数(5台)を下回る場合、事業計画変更認可申請が必要
運送業で変更の事前届出が必要なもの
認可と届出の違いは説明したとおりですが、認可と違い、届出の場合は事前申請は必要なく、届出が受理された時点で完了となります。
運送業の事業計画変更届出は事前届出と事後届出がありますので、それぞれ解説していきます。
事業用自動車の数の変更
各営業所に配置する事業用自動車の数の変更は事前届出が必要となります。
ただし、減車により基本台数を下回る数の変更などは、事業計画変更認可申請の対象となります。
休止・廃止届
諸事情により、事業を休止・廃止したい場合は、事前に届出を行う必要があります。
休止・廃止の届出は、休止・廃止の30日前までに提出する必要があります。
運送業で変更の事後届出が必要なもの
最小行政区画の営業所の位置の変更
運送業の営業所の新設、移転は、事業計画の変更となるため原則として「認可」を受けることが必要です。
ただし、同一市区町村内など地方運輸局長が指定する区域内の移転の場合は運輸支局へ「届出」を行うことで足ります。
よくある誤解として、『営業所を移転してもナンバープレートが変らなければ大丈夫』といった誤解があります。
たとえば、和泉市の事業者様が泉大津市に営業所の位置を変更された場合、車両のナンバープレートは「和泉」で変更はありませんが、同一市内での移転ではないので、事業計画変更認可申請が必要となります。
運行管理者、整備管理者の選任・変更・解任
運行管理者や整備管理者の選任・変更・解任は届出を行う必要があります。
運行管理者の選任・変更・解任は概ね1週間以内に届出を行う必要があり、整備管理者の選任・変更・解任は15日以内に行う必要があります。
運行管理者の届出→→→7日以内に行う必要がある
整備管理者の届出→→→15日以内に行う必要がある
貨物利用運送事業の登録事項等変更
一般貨物自動車運送事業をされている事業者が新たに利用貨物運送を始める場合、事業計画変更認可申請が必要となります。
変更の届出で済むケースは、一般貨物運送事業者がすでに利用運送をしており、その中で何らかの変更が発生した場合です。
⚫︎住所
⚫︎氏名または名称
⚫︎代表者などの氏名
⚫︎主たる事務所の名称及び位置
⚫︎営業所の名称及び位置
⚫︎保管施設の概要
⚫︎利用する実運送事業者又は利用運送事業者の概要
一例として、利用貨物運送事業も行なっている一般貨物自動車運送事業者が営業所を移転する場合、「一般貨物自動車運送事業の営業所移転における事業計画変更認可申請」と「利用貨物運送の営業所移転の届出」を行う必要があります。
氏名または名称、住所の変更
氏名や名称が変わったときも変更の届出が必要となります。
例えば、個人事業主が結婚して氏名が変わったときや、会社名を変更した際に変更の届出が必要となります。
会社の住所が変更になった際も変更届出が必要となります。
ここでいう住所とは、法人の登記簿に記載される本社住所です。
役員の変更
役員を変更される場合も変更届出が必要となります。
代表権を有する役員と代表権を有しない役員の変更では、変更届での期間が異なります。
代表権を有する役員の変更・・・変更後遅滞なく届出が必要
代表権を有しない役員の変更・・・毎月7月1日~6月30日までの期間に係る変更について、毎月7月31日まで
まとめ
運送業の許可を取得し事業を行なっていくうえで、何かしらの変更事項が生じることはよくある話です。
認可申請が必要なもの、変更の届出でも事前届出が必要なもの事後届出でよいものに分かれます。
変更する内容により、必要な添付書類も変わってきますし、期限も変わってきます。
事業計画変更認可申請は標準処理期間が1ヶ月〜3ヶ月となりますので、申請書を出してから認可が降りるまでに相当な時間を要します。
しかしながら、日々お忙しい事業者様にとっては、期日に間に合うように準備するのはかなりの労力がかかってくるのではないでしょうか。
運送事業を行なっていく上で、認可申請や変更届出の必要な変更事項が生じた場合、専門家である行政書士までお気軽にご相談ください。
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勝浦行政書士事務所では、一般貨物自動車運送事業の事業計画変更認可申請代行を行なっております。
運行車の車両数の変更・車庫の拡大・車庫の移転・営業所の移転など、事業計画変更認可申請が必要なケースは多々あります。
「日常業務が忙しく、必要書類の手配ができない」「手続きが難しく何をして良いかわからない」といった事業者様は、ぜひ当事務所までご相談ください。
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