運送業(一般貨物自動車運送事業)を営んでいる方が、営業所を移転しようとすると、”事業計画認可申請”という手続きが必要になります。
そして、認可を得るには、いろいろな要件を満たす必要があります。
営業所として認可されるには立地などの条件がありますので、この記事では、運送業の営業所を移転するにあたっての注意点を解説します。
運送業の営業所とできる要件
一般貨物自動車運送事業で使用する営業所には以下の要件があります。
営業所としての要件
①農地法・都市計画法・建築基準法などに抵触していない
②使用権限を有することの裏付けがある
③必要な備品を備えているなど、事務所機能を有すること
④事業の遂行上適切な規模であること
では、各項目を詳しく見ていきましょう
農地法・都市計画法・建築基準法などに抵触していない
運輸局発出の公示基準には、営業所の審査項目のうち立地条件として、「農地法・都市計画法・建築基準法などの関係法令などに抵触しないものであり、その旨の宣誓書の提出があること」とされています。
農地法では、地目項目が農地になっている土地に建物を建てることができません。
従って、営業所の移設予定地が農地であった場合、営業所の移転は出来ないことなrかねません。
営業所の移設予定地が農地であれば、違う土地への変更を検討するか、雑種地などへ地目変更を行う必要があり、時間も費用も余計にかかってしまうことになります。
営業所の移転が必要な場合、移転先候補地の地目項目の調査は必ず行う必要があります。
気をつけなければならないのは、地目項目だけではありません。
都市計画法の市街化調整区域にも営業所の移転をすることはできません。
市街化調整区域とは、都市計画法で「市街化を抑制すべき区域」と定義されています。
そして、市街化調整区域は、原則として開発行為や都市施設の整備は行われず、基本的に住宅は建てられません。
運送業の営業所を市街化調整区域内に移転するのは、非常にハードルが高く、自治体に認められない可能性もあるため、お勧めすることはできません。
絶対に営業所を市街化調整区域内に移転するのは不可能というわけではないのですが、移転候補地が市街化調整区域であれば、移転先の変更を検討された方が賢明な判断かもしれません
運送業の営業所は、農地や市街化調整区域には原則建てることはできない
使用権限を有することの裏付け
営業所を移転する先の不動産が自己所有のものであれば、不動産の登記簿謄本において、使用権限を有することの裏付けとすることができます。
一方で賃貸はというと、賃貸借契約書が使用権限を有することの裏付けとなります。
賃貸の場合、賃貸借契約で気をつけいことが、契約期間が1年以上または1年未満の場合は自動更新の文言が付記されていることが条件となり、賃貸借契約書の提示または写しの提出を持って使用権限を有することの裏付けとなります。
営業所が賃貸の場合、契約期間が1年以上または自動更新の記載がある賃貸借契約書が必要となる
転貸借の場合は注意が必要
転貸借とは、物件を借りた人(賃借人)が従来の賃貸借契約を維持しながら、目的物件を第3者に賃貸することをいいます
運送業で営業所として借りようとする物件が転貸借となる契約であれば注意が必要です。
例えば、賃貸人と賃借人との間でトラブルになり、賃貸借契約が終了となった場合、転貸借契約も原則終了することになります。
そうなれば、物件の所有者から物件の明渡請求がくるといった事態になりかねません。
借地借家法では、、「建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を転借人に対抗することができない」と定められていますが、賃借人の債務不履行(家賃を払わないなど)の理由による賃貸借契約の解約であれば、最高裁の判例では、「賃貸借契約が賃借人(転貸人)の債務不履行により終了した場合、賃貸人の承諾ある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物(建物)の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する、目的物を使用収益させる債務の履行不能により消滅する」としています。
要は、自分はきちんと家賃を支払っていて、物件を借り続けたいのに、賃貸人と賃借人とのトラブルにより、営業所を移転しなければならないといった事態になる可能性があるということです。
転貸借契約にはそういったリスクもあることは把握しておかなければいけません。
物件を転貸借契約で借りる場合は注意が必要
必要な備品を備えているなど、事務所機能を有すること
必要な備品とは具体的には以下のようなものです。
机や椅子
パソコン
アルコール検知器
電話
キャビネット
コピー機
常識的に事務所として機能するために必要なものがあれば問題ありません。
事業の遂行上適切な規模であること
”事業の業務遂行上適切な規模”とは具体的には、「おおよそ10㎡以上の専有できる広さをいう」とされています。
ただし、10㎡未満のものについては、机、椅子、電話等の営業上の対応を行う設備(計画)を有し、かつ運行管理等事業遂行上支障ないものであることで要件を満たすとされています。
例えば、自宅の1室を営業所とする場合などは、6畳以上の広さというのが基準となります。
自宅の1室を営業所とする場合には、居住空間と営業所とは明確な区別をする必要があります。
「例えば、生活空間としても使うリビングを営業所にする」などは認められない可能性が高いということです。
営業所の広さは6畳以上というのが基準となる
営業所移転の流れ
営業所の移転とは、既存の営業所を廃止し、別の場所に営業所を新設することをいいます。
一般貨物自動車運送事業者が営業所を移転するときは、次のような流れで手続きを進めていくことになります。
- 要件を満たした物件を見つける
- 営業所移転にかかる事業計画変更認可申請書および添付書類を準備する
- 管轄の運輸支局へ申請書及び添付書類を提出する
- 運輸支局が申請内容を審査する
- 審査に問題なければ営業所の移転が認可される(認可証が発行される)
- 運行管理者と整備管理者の選任届を提出する(人員の変更がなくても届出が必要)
- 車検証の書き換え・ナンバーが変わればナンバープレートの変更を行う
- 移転先の営業所で営業開始
運行管理者や整備管理者に変更がなくても営業所を移転した場合、運行管理者・整備管理者の選任届が必要となり、ナンバープレートの変更がない地域での移転であっても車検証の書き替えが必要となることに注意が必要です。
まとめ
一般貨物自動車運送事業の営業所の移転・新設では、「土地が農地ではないか」「市街化調整区域に入っていないか」など、関係法令に抵触しないかを確認する事前調査が何より重要になります。
何も確認せずに移転先を決めてしまうと、事業計画変更認可が下りずに移転や新設ができないといった事態になってしまいます。
一般貨物自動車運送事業の営業所は、要件が厳しく定められているため、移転や新設の際は注意が必要です。
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勝浦行政書士事務所では、一般貨物自動車運送事業の事業計画変更認可申請代行を行なっております。
運行車の車両数の変更・車庫の拡大・車庫の移転・営業所の移転など、事業計画変更認可申請が必要なケースは多々あります。
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