一般貨物自動車運送事業を営んでいると、
- 事務所が手狭になった
- 車庫との距離を改善したい
- 家賃を下げたい
- アクセスの良い場所へ移転したい
といった理由から営業所の移転を検討することがあります。
しかし、一般貨物自動車運送事業における営業所は許可要件の一つであるため、自由に移転できるわけではありません。
移転先によっては変更認可申請を行わなければならず、認可が下りる前に移転してしまうと法令違反となる可能性もあります。
今回は、一般貨物自動車運送事業の営業所移転時に必要な手続きや注意点について解説します。
営業所移転には「変更認可申請」が必要
一般貨物自動車運送事業の営業所を移転する場合、多くのケースで「事業計画変更認可申請」が必要になります。
営業所は事業計画の重要事項として許可を受けているためです。
ただし、営業所を移転するすべてのケースで変更認可申請が必要になるわけではありません。
営業所の移転が最小行政区間内での移転であれば、「変更認可申請」ではなく「変更届出」によって手続きを行うことができます。
最小行政区間とは?
最小行政区間とは、一般的には「市町村」のことを指します。
例えば、
- 大阪市から東大阪市への移転
- 堺市から和泉市への移転
といった場合は市が変わるため、変更認可申請が必要になります。
一方で、
- 東大阪市内での移転
- 吹田市内での移転
など、同一市内での移転であれば変更届出で対応することが可能です。
なお、東京都の特別区(23区)はそれぞれが最小行政区間として扱われます。
例えば、新宿区から渋谷区への移転は最小行政区間をまたぐ移転となります
一方で、大阪市中央区や大阪市北区などの政令指定都市の「区」は最小行政区間には該当しません。
「変更認可申請」と「変更届出」の違い
営業所移転の手続きでは、「変更認可申請」と「変更届出」の違いを理解しておくことが重要です。
変更認可申請は、申請後に運輸支局による審査が行われます。
提出書類や移転先の要件に問題がなければ認可が下り、その後に営業所を移転することができます。
変更認可申請は、申請を行ってから書類や要件に不備がなかったとしても、認可が下りるまでに2〜3ヶ月程度の時間がかかってしまいます。
一方で、変更届出は、届出書が受理された時点で手続きが完了します。
運輸支局による事前審査はなく、比較的短期間で移転手続きを進めることができます。
移転先が許可要件を満たしているか確認が必要

営業所を移転する際は、まず移転先が許可要件を満たしているか確認する必要があります。
運送業の営業所には、「場所」「使用権限」「面積」などの要件があります。具体的には以下の点に注意が必要です。
- 市街化調整区域
- 用途地域
- 使用権限
- 車庫との距離
- 営業所の広さと設備
市街化調整区域には営業所は移転できない?
市街化調整区域は、都市計画法に基づき、市街化を抑制するための区域として定められています。原則として、建築や開発行為は制限されます。
運送業の営業所は基本的に「市街化調整区域」には設置することはできません。
基本的にというのは、「都市計画法34条に基づいた開発許可を得る」ことで市街化調整区域においても営業所を移転できる可能性があるからです。
- 幹線道路の沿道等における流通業務施設
- 既存の宅地における開発行為又は建築行為等
幹線道路の沿道等における流通業務施設
幹線道路沿道やインターチェンジ周辺における流通業務施設は、物流の効率化や周辺交通への影響などを踏まえ、市街化調整区域であっても例外的に立地が認められる場合があります。
ただし、すべての運送会社の営業所や物流倉庫が認められるわけではありません。都市計画法第34条第14号や各自治体の開発審査会基準に基づき、指定された幹線道路沿道・インターチェンジ周辺などで、一定の要件を満たす「流通業務施設」や「特定流通業務施設」に限って、開発許可の対象となる場合があります。
そのため、営業所移転先が市街化調整区域にある場合は、用途地域だけでなく、自治体の開発許可基準や開発審査会基準に該当するかを事前に確認することが重要です。
既存の宅地における開発行為又は建築行為等
日本の土地には「地目(ちもく)」というものがあります。地目とは、その土地がどのような用途で利用されているかを登記上で示す区分のことです。
市街化調整区域内にある土地であっても、建物の建築や利用が認められるケースがあります。
市町村によって取扱いは異なりますが、一般的には昭和45年頃の都市計画区域区分(いわゆる線引き)以前から宅地として利用されていた土地については、建築が認められる制度や基準が設けられている場合があります。
そのため、このような土地に既に建築されている建物については、自治体の許可基準や建築確認上の問題がなければ、運送業の営業所や休憩・睡眠施設として利用できる可能性があります。
ただし、市街化調整区域内の建物は自治体ごとに取扱いが大きく異なるため、「地目が宅地だから使える」とは限りません。営業所として使用できるかどうかは、建築時期や建築許可の内容、現在の利用状況などを個別に確認する必要があります。
用途地域
営業所を設置しようとする土地の「用途地域」と「地目項目」にも注意が必要です。
用途地域とは、都市の健全な発展や環境の保護を目的に、都市計画法によって用途ごとに土地の利用を制限する区域のことをいいます。
地目項目で気をつけいないといけないのが「農地」です。運送業の営業所は農地に設けることができません。
地目は土地の登記簿で確認することができます。

この「地目」が「田」や「畑」となっている土地であった場合、地目変更(農地転用)が必要になります。
一見、田んぼや畑に見えない土地でも、登記簿上の地目が田や畑であった場合でも許可はおりません。
実際の土地の見た目ではなく、登記簿上どうなっているかの確認が必ず必要です。
使用権限の確保
営業所については、申請者が継続して使用できる権限を有している必要があります。
使用権限は、一般的に次のような書類で証明します。
- 自己所有の場合:建物の登記事項証明書
- 賃貸の場合:賃貸借契約書
- 使用貸借・親族所有・法人代表者所有などの場合:使用承諾書
特に賃貸物件の場合は、契約期間や使用目的に注意が必要です。
一般貨物自動車運送事業では、営業所について一定期間以上の使用権限が求められるため、短期間の契約や、更新の見込みが確認できない契約内容では、認可が難しくなることがあります。
また、賃貸借契約書の使用目的が「居住用」や「住居専用」となっている場合は、営業所として認められません。
契約書上で「事務所使用可」「事業用使用可」「一般貨物自動車運送事業の営業所として使用可」など、営業所として使用できることが確認できる内容になっているかが重要です。
賃貸借契約書に営業所として使用できることが明記されていない場合は、別途、貸主から使用承諾書を取得する必要があります。
また、転貸借の場合にも注意が必要です。
たとえば、管理会社や別法人が借り上げている物件をさらに借りる場合など、申請者が所有者から直接借りていないケースでは、通常の賃貸借契約書だけでは使用権限の証明として不十分となることがあります。
このような場合は、賃貸人からの使用承諾に加えて、物件所有者から転貸借についての承諾書が必要となることがあります。
そのため、営業所として利用する物件を契約する前に、
- 契約期間は十分か
- 使用目的が営業所利用に対応しているか
- 貸主と所有者が一致しているか
- 転貸借にあたらないか
を確認しておくことが重要です。
特に管理会社が間に入っている物件では、契約関係が複雑になっていることがあります。契約後に「使用承諾書が取れない」「所有者の承諾が必要だった」と判明すると、営業所移転の手続きが進まなくなる可能性があります。
車庫との距離
営業所を移転する際に見落とされがちなのが、営業所と車庫との距離です。
一般貨物自動車運送事業では、営業所と車庫があまりにも離れていると、運行管理や車両管理を適切に行うことができないと判断されるため、一定の距離制限が設けられています。
営業所と車庫の距離は地域によって「5km」または「10km」以内となります。
例えば、大阪府では貝塚市・泉佐野市・泉南市・能登郡・泉南郡及び南河内郡のうち太子町、 河南町及び千早赤坂村は5キロメートル以内、それ以外は10キロメートル以内となります。
面積や設備に関する要件
営業所は、事業を行うために適切な規模と設備を備えている必要があります。
運輸局の公示では、営業所について「事業の遂行上適切な規模であること」とされており、適切な規模とは、おおむね10㎡以上の専有できる広さをいうとされています。
ただし、営業所の面積が10㎡未満であれば必ず認可が下りない、というわけではありません。
10㎡という面積は一つの目安であり、10㎡未満であっても、机・椅子・電話など、営業上の対応を行う設備が備わっていれば、営業所として認められる可能性があります。
営業所に必要となる主な設備としては、次のようなものがあります。
- 机
- 椅子
- 電話
- パソコン
- 書類を保管するキャビネット
- 運行管理や事務作業を行うスペース
なお、固定電話やFAXについては、管轄の運輸支局によって取扱いが異なる場合があります。
近年は固定電話を設置しない事業者もありますが、申請時に固定電話の設置が間に合わない場合や、携帯電話で対応したい場合には、事前に管轄の運輸支局へ確認しておくことが安全です。
営業所移転の一般的な流れ
運送事業の営業所移転は一般的に以下の流れで行います。
- 用途地域
- 建築基準法上の問題
- 使用権限
- 車庫との位置関係
を確認します。
主な書類として、
- 変更認可申請書
- 土地の登記簿謄本
- 賃貸借契約書(賃貸や転貸借の場合)
- 使用承諾書(賃貸や転貸借の場合)
- 営業所の平面図・配置図
- 営業所の写真(外観、内観、標識など)
などが必要になります。
営業所移転の内容に応じて、
- 変更認可申請
- 変更届出
のいずれかを行います。
変更認可申請の場合は、認可が下りるまで新営業所で営業を開始することはできません。
変更認可申請の場合は認可取得後に移転を行います。
変更届出の場合は、届出手続き完了後に移転を進めます。
手続きの種類によって移転可能なタイミングが異なるため注意が必要です。
よくある失敗事例

運送事業の営業所の移転でよくある失敗事例には土地の要件と使用権限の要件などがあります。
- 物件契約後に土地の要件を満たしていないと分かった
- 賃貸であったが、実は転貸借契約であった
- 賃貸契約書に「営業所使用可」の記載がなかった
物件契約後に土地の要件を満たしていないと分かった
運送事業の営業所とすることができない、「市街化調整区域」や用途地域、土地の地目項目が「田・畑」の農地であることが、物件契約後の分かるケースが少なからずあります。
弊所にご相談いただいたお客様の中にも、農地であったため農地転用を行わなければならず、予定よりも時間がかかってしまったケースがあります。
土地の要件に不安がある方は、物件契約前に専門家に相談することをおすすめします。
賃貸であったが、実は転貸借契約であった
営業所移転の際に意外と多いのが、契約しようとしている物件が「転貸借(又貸し)」だったケースです。
例えば、物件の所有者が第三者へ賃貸し、その賃借人や管理会社がさらに申請者へ貸し出している場合があります。
このような転貸借物件では、申請者が契約する相手(賃貸人)が営業所としての使用を承諾していても、それだけで使用権限が認められるとは限りません。
所有者が運送事業の営業所として利用されることを承諾していない場合には、営業所として使用することが認められない可能性があります。
そのため、転貸借物件では、
- 賃貸人からの使用承諾
- 所有者からの転貸借承諾
- 営業所として使用することへの承諾
が必要となる場合があります。
実際に、契約後になって「所有者の承諾が取得できないことが判明した」「転貸借自体が認められていなかった」という理由で、営業所移転の計画を見直さなければならなくなるケースもあります。
特に管理会社や不動産会社が貸主として契約書に記載されている場合は、物件所有者との関係を事前に確認しておくことが重要です。
賃貸契約書に「営業所使用可」の記載がなかった
物件を契約する際に見落としやすいのが、賃貸借契約書の使用目的です。
契約時には「事務所として使っていいと言われた」「不動産会社から問題ないと言われた」というケースでも、実際の賃貸借契約書には、
- 居住用
- 住居専用
- 店舗として使用
- 倉庫として使用
などと記載されており、運送事業の営業所として使用できることが明確になっていない場合があります。
一般貨物自動車運送事業の営業所として使用するためには、営業所として利用できる権限を証明しなければなりません。
そのため、賃貸借契約書に営業所として使用できる旨の記載がない場合は、別途、貸主から使用承諾書の提出を求められることがあります。
特に、「事務所利用可」と記載されていても、運送事業の営業所としての利用について確認が必要になる場合がありますので、契約前に運輸支局や専門家へ相談することをおすすめします。
大阪で一般貨物自動車運送事業の営業所移転なら勝浦行政書士事務所へ
当事務所では、大阪府内の一般貨物自動車運送事業に関する
- 営業所移転認可申請
- 営業所移転届出
- 車庫変更認可申請
- 事業計画変更認可申請
- 新規許可申請
に対応しております。
特に営業所移転については、
- 契約前の用途地域調査
- 変更認可申請・変更届出の要否判断
- 認可取得の可否確認
- 必要書類の作成
- 運輸支局への申請代行
まで一貫してサポートいたします。
「この物件で営業所移転できる?」
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「契約前に確認してほしい」
という場合もお気軽にご相談ください。
初回相談無料で対応しております。



