一般貨物自動車運送事業を始めるためには、国土交通大臣の許可を取得する必要があります。
しかし、トラックを5台用意すれば、誰でも許可を取得できるわけではありません。
営業所や車庫の立地条件、車両の台数、運行管理者の確保、資金計画など、さまざまな許可要件を満たす必要があります。
実際に、営業所として使用する予定の物件を契約したものの、用途地域の問題で許可申請に使用できないといったケースも考えられます。
また、申請時点では問題がなくても、審査期間中に資金が不足したり、役員法令試験に合格できなかったりすると、許可取得が難しくなることがあります。
この記事では、大阪府で一般貨物自動車運送事業の新規許可を検討している方に向けて、許可が取れない代表的なケースと、申請前に確認しておきたい注意点を行政書士が解説します。
一般貨物自動車運送事業は要件を満たさなければ許可が取れない

一般貨物自動車運送事業の許可には、貨物自動車運送事業法や運輸局の公示基準に基づく審査があります。
主な審査項目は次のとおりです。
- 営業所の立地や使用権原
- 車庫の広さや前面道路の条件
- 営業所・車庫が都市計画法・農地法などに違反していない
- 事業用自動車の台数
- 運転者・運行管理者・整備管理者の確保
- 休憩・睡眠施設の設置
- 事業開始に必要な資金の確保
- 役員法令試験への合格
- 欠格事由への非該当
- 輸送の安全を確保するための管理体制
これらの要件は、原則としてすべて満たす必要があります。
例えば、車両や人員、資金を十分に確保できていたとしても、営業所の立地条件が基準に適合していなければ、その事業計画のまま許可を取得することはできません。
なお、申請書に不備があった場合、直ちに不許可になるとは限りません。審査中に補正を求められることもあります。
ただし、補正によっても許可要件を満たせない場合は、事業計画そのものを見直す必要があります。
営業所の要件を満たしていないケース

一般貨物自動車運送事業の新規許可で、特に注意したいのが営業所の立地条件です。
用途地域の制限により営業所として使用できない
営業所は、都市計画法や建築基準法などの関係法令に適合している必要があります。
例えば、住居系の用途地域では、予定している建物の用途や規模などによって、運送業の営業所として使用できない場合があります。
また、市街化調整区域では、原則として建築や用途変更などに制限があるため、営業所として利用できるか慎重な確認が必要です。
注意したいのは、不動産会社から「事務所として使用できる」と説明されていても、一般貨物自動車運送事業の営業所として使用できるとは限らないという点です。
事務所を賃貸する場合、賃貸借契約を締結する前に、用途地域や建物の適法性を確認することが重要です。
営業所の使用権原を証明できない
営業所として使用する物件については、適切な使用権原を確保する必要があります。
賃貸物件の場合は、原則として賃貸借契約書などによって使用権原を確認します。
例えば、契約上の使用目的が住居専用となっている場合や、事業用としての使用が認められていない場合は、契約内容の変更や貸主の承諾などが必要になることがあります。
また、特に注意したいのが、賃貸人と物件の所有者が異なるケースです。
例えば、物件の所有者から管理会社などが建物を借り受け、その建物を事業者に貸し出している場合です。
このような契約形態を「転貸借契約」といいます。
一般貨物自動車運送事業の新規許可申請において、転貸借契約となっている場合は、直接の賃貸人との契約だけでなく、物件所有者が転貸を承諾しているかどうかも重要な確認事項となります。
契約内容によっては、所有者からの転貸承諾書など、追加の書類が必要になる場合があります。
そのため、賃貸人と所有者が異なる物件については、契約前に権利関係を確認しておくことが重要です。
また、許可取得までの審査期間だけでなく、事業開始後も継続して営業所を使用できる契約内容となっているか確認しておきましょう。
営業所としての設備が整っていない
営業所には、運送事業を適切に運営できる施設が必要です。
一般的には、机・椅子・パソコン・電話・書類保管設備などを設置できる環境を確保します。
なお、営業所に固定電話を設置することが、必ずしも許可取得の条件となるわけではありません。
例えば、新規許可申請までに固定電話の設置が間に合わない場合や、そもそも固定電話を設置せず、携帯電話で事業を運営する予定の場合でも、携帯電話によって必要な連絡体制を確保できていれば、固定電話がないことだけを理由に許可要件を満たさないとは限りません。
重要なのは、固定電話の有無ではなく、運送事業を適切に運営できる連絡体制が整っているかどうかです。
また、営業所の面積について一律の数値基準が設けられているわけではありませんが、事業規模に見合った適切な広さが必要です。
車庫の要件を満たしていないケース

営業所と同様に、車庫も許可取得に大きく関係する施設です。
特に、車庫については敷地の広さだけでなく、前面道路や営業所との距離なども確認する必要があります。
土地の要件を満たしていない
車庫の要件の中で特に気をつけないといかないのが、土地の要件を満たしいてるどうかです。
一般貨物自動車運送事業の車庫では、土地の広さや前面道路の幅員だけでなく、土地の地目や都市計画法上の制限にも注意が必要です。
まず、車庫として使用する土地の地目が「田」や「畑」などの農地となっている場合です。
農地を車庫として使用するには、原則として農地転用の許可や届出など、農地法に基づく適切な手続きが必要となります。
そのため、農地転用が認められない土地については、一般貨物自動車運送事業の車庫として使用することができません。
また、市街化調整区域にある有蓋車庫(屋根付き車庫)にも注意が必要です。
市街化調整区域は、原則として市街化を抑制する区域であり、建築物の新築や用途変更などに制限があります。
そのため、市街化調整区域に屋根付きの車庫を新たに設置する場合や、既存の建物を車庫として使用する場合は、都市計画法上の許可や適法性の確認が必要となります。
一方、屋根のない無蓋車庫(青空駐車場)であれば、市街化調整区域であっても、その他の要件を満たすことで車庫として使用できる場合があります。
ただし、無蓋車庫であれば必ず使用できるわけではありません。農地法や都市計画法など、関係法令への適合が必要です。
車庫を契約する前には、登記事項証明書で地目を確認するとともに、市街化調整区域に該当するか、屋根付き車庫として使用できるかを確認しておくことが重要です。
車庫の広さが不足している
車庫には、事業用自動車を適切に収容できる広さが必要です。
近畿運輸局管内では、車両と車両、車両と境界などの間に、原則として50cm以上の間隔を確保する必要があります。
例えば、5台分の駐車スペースがあると説明されていても、一般貨物自動車運送事業の車庫として必要な間隔を確保すると、5台すべてを収容できないことがあります。
また、駐車スペースだけでなく、車両の出入りに支障がないことも重要です。
そのため、車庫を契約する前に、実際に使用する車両の寸法に基づいて配置図を作成し、収容可能か確認することをおすすめします。
前面道路の幅員が不足している
車庫の前面道路についても注意が必要です。
道路幅員と使用する車両の幅などとの関係が、車両制限令に適合している必要があります。
道路の幅が十分にあるように見えても、車両の大きさや道路の種類、通行条件などによっては、基準に適合しない場合があります。
特に、大型トラックを使用する場合は注意が必要です。
車庫の広さに問題がなくても、前面道路の条件を満たさなければ、その車庫を使用した許可取得は難しくなります。
前面道路の要件に関しては、こちらの記事でも解説しています。
営業所と車庫の距離が基準を超えている
営業所と車庫は、原則として併設することが求められます。
併設できない場合は、地域ごとに定められた距離の範囲内に車庫を設置する必要があります。
なお、この距離は実際の走行距離ではなく、原則として直線距離で判断します。
営業所と車庫を別々に契約する場合は、契約前に距離を確認しておきましょう。
大阪府内でも地域によって距離基準が異なり、5km以内または10km以内などの基準が設けられています。
| 10キロメートル以内 | 下記以外の市区町村 |
| 5キロメートル以内 | 貝塚市・泉佐野市・泉南市・能登郡・泉南郡及び南河内郡のうち太子町、 河南町及び千早赤坂村 |
運輸局の管轄が変われば距離の条件も変わりますので、管轄の運輸局の情報を確認する必要があります。
車両の要件を満たしていないケース
一般貨物自動車運送事業では、一部の例外を除いて、事業用車両は5台以上の計画が必要となります。
事業用自動車が5台未満である
一般貨物自動車運送事業では、原則として営業所ごとに5台以上の事業用自動車を配置する必要があります。
そのため、車両を3台しか確保できない場合などは、原則として新規許可の要件を満たしません。
ただし、必ずしも大型トラックを5台用意する必要はありません。
4ナンバーの小型貨物自動車なども、事業用自動車として使用できる車両であれば台数に算入できます。
また、車両は新車である必要はなく、中古車やリース車両でも構いません。
車両の使用権原を確保できない
新規許可申請では、使用する車両の確保についても確認されます。
近畿運輸局では、申請時点で車両の購入が完了していなくても、見積書などを使用して申請を進められる場合があります。
ただし、申請時点で見積書による対応が認められたとしても、そのまま許可取得や運輸開始まで車両を確保しなくてよいわけではありません。
審査中の補正や許可後の手続きに備えて、購入・リースの予定を具体的にしておく必要があります。
運行管理者・整備管理者・運転者を確保できないケース

一般貨物自動車運送事業では、車両を用意するだけでは事業を開始できません。
運行管理者、整備管理者、運転者など、運送事業を適切に運営するための人員を確保する必要があります。
運行管理者を確保できない
運行管理者は、運転者の乗務管理や点呼など、輸送の安全を確保するための重要な役割を担います。
原則として、営業所ごとに必要な人数の運行管理者を選任する必要があります。
新規許可申請時点で選任予定者として申請することは可能ですが、事業開始までに必要な資格を持つ人員を確保できなければ、運輸開始の手続きを進めることができません。
整備管理者を確保できない
整備管理者についても、必要な資格要件を満たす人員を確保する必要があります。
整備管理者になるためには、一定の整備実務経験や整備士資格などの要件があります。
誰でも整備管理者になれるわけではないため、事前に資格要件を確認しておきましょう。
運転者の人数が不足している
事業計画に見合った人数の運転者を確保することも必要です。
例えば、車両を5台配置する計画であるにもかかわらず、実際に運転する人員を十分に確保できない場合は、事業計画の実現性に問題が生じます。
また、運転者が使用する車両に応じた運転免許を保有していることも重要です。
資金要件を満たしていないケース

一般貨物自動車運送事業の新規許可では、事業を継続して運営できるだけの資金を確保していることが求められます。
新規許可申請では、事業計画に基づいて所要資金を計算します。
事業開始に必要な自己資金が不足している
所要資金には、主に次のような費用が含まれます。
- 車両の購入費用やリース費用
- 営業所・車庫などの施設費用
- 運転者や役員などの人件費
- 燃料費や修繕費などの運転資金
- 自動車保険料
- 租税公課
- その他、事業開始に必要な費用
これらの所要資金に対して、必要な自己資金を確保できていなければ許可要件を満たしません。
必要資金は事業計画によって異なるため、すべての事業者に共通する一定の金額があるわけではありません。
申請後に自己資金が不足してしまう
資金要件で特に注意したいのが、申請後の預金残高です。
近畿運輸局では、申請時点だけでなく、審査期間中にも自己資金の確認が行われます。
そのため、申請時点で必要な自己資金を確保していても、審査期間中に資金が減少し、基準を下回ってしまうと問題になります。
例えば、車両の購入費用や営業所の工事費用などを申請後に支払う場合は、自己資金の維持に注意が必要です。
申請時に資金が足りていればよいのではなく、許可取得まで必要な自己資金を維持することが重要です。
資金要件に関しては、こちらの記事でも解説しています。
役員法令試験に合格できないケース
一般貨物自動車運送事業の新規許可申請では、申請者が法令試験に合格する必要があります。
法人の場合は、原則として申請事業に専従する常勤役員が受験します。
近畿運輸局の法令試験は、原則として奇数月に実施され、30問中24問以上の正解が合格基準です。
不合格の場合は再試験を受けることができますが、2回とも不合格となった場合は、申請の取下げ指導の対象となります。
そのため、営業所や車庫、車両、資金などの要件をすべて満たしていたとしても、法令試験に合格できなければ許可を取得できません。
法令試験は、貨物自動車運送事業法だけでなく、道路交通法や労働基準法など幅広い分野から出題されます。
申請後に勉強を始めるのではなく、できるだけ早い段階から準備を進めておくことをおすすめします。
欠格事由に該当しているケース
一般貨物自動車運送事業では、貨物自動車運送事業法第5条に欠格事由が定められています。
例えば、一定の刑事処分を受けた場合や、過去に貨物自動車運送事業の許可を取り消された場合など、法律で定められた条件に該当すると許可を受けられません。
法人の場合は、法人だけでなく役員についても欠格事由の確認が必要です。
なお、過去に処分歴があるからといって、すべての場合に永久に許可を取得できなくなるわけではありません。
処分の内容や経過期間などによって判断されます。
欠格事由に該当するかどうか不明な場合は、申請前に確認しておくことが重要です。
申請準備前に確認しておきたい5つの注意点

ここまで、一般貨物自動車運送事業の許可が取れない代表的なケースを解説しました。
これらの問題を防ぐためには、申請書類を作成する前の準備が重要です。
1.営業所・車庫を契約する前に要件を確認する
営業所や車庫は、一度契約すると簡単に変更できないことがあります。
特に、営業所の用途地域や車庫の前面道路幅員などは、契約後に改善することが難しい項目です。
物件を契約する前に、関係法令や運輸局の公示基準に適合しているか確認しましょう。
2.使用する車両を具体的に決める
車両の台数だけでなく、長さ・幅・高さ・車両総重量などの諸元を確認しておきましょう。
特に車庫の収容能力や前面道路の適合性を確認するためには、使用する車両の寸法が重要です。
中古車を購入する場合は、車検証などで車両情報を確認しておくことをおすすめします。
3.必要な自己資金を事前に計算する
車両や物件を契約する前に、所要資金を計算しておくことが重要です。
事業計画によっては、想定していた以上の資金が必要になる場合があります。
また、申請後の資金の動きも考慮し、許可取得まで必要な自己資金を維持できる計画を立てましょう。
4.運行管理者・整備管理者の確保を進める
必要な資格を持つ人員を確保できるか、早い段階で確認しておきましょう。
特に、運行管理者や整備管理者を外部から採用する予定の場合は、採用計画に無理がないか確認する必要があります。
5.許可取得までのスケジュールを考える
一般貨物自動車運送事業の新規許可は、申請後すぐに取得できるものではありません。
近畿運輸局では、許可までの標準的な期間を3〜5か月と案内しています。ただし、法令試験への合格や補正事項への対応が整っていることが前提です。
さらに、許可取得後も運行管理者・整備管理者の選任、緑ナンバーへの変更、運輸開始に向けた手続きなどが必要です。
準備期間から申請を行い許可が下りるまでに1年程度かかるケースもめずらしくありません。
そのため、事業開始予定日から逆算して準備を進めることが重要です。
大阪で一般貨物自動車運送事業の新規許可を検討している方へ
一般貨物自動車運送事業の新規許可では、営業所・車庫・車両・人員・資金など、さまざまな要件を確認する必要があります。
特に、営業所や車庫の立地条件、前面道路幅員、資金計画などは、事業計画の初期段階で確認しておきたい項目です。
許可要件を十分に確認しないまま物件や車両を契約すると、後から事業計画を変更しなければならなくなることもあります。
勝浦行政書士事務所では、大阪府を中心に一般貨物自動車運送事業の新規許可申請をサポートしています。
営業所や車庫の要件確認、必要資金の計算、申請書類の作成から許可取得後の手続きまで対応しております。
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一般貨物自動車運送事業の新規許可申請について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。







