風俗営業の対象になるのはどんな店?深夜酒類提供営業との違いを解説

風俗営業と深夜営業の違い

飲食店を開業する際に、よく混同されるのが 「深夜酒類提供飲食店営業(深酒)」「風俗営業」 の違いです。

実は、営業時間や店内の明るさ、接客方法などによって、「深夜酒類提供」だけの届出で営業できる店風俗営業許可が必要な店に分かれます。

誤って風俗営業許可が必要な営業をしてしまうと、
無許可営業は、「5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金(個人)」の重い処罰対象となるため注意が必要です。

この記事では、

  • 風俗営業の対象になる店舗の特徴
  • 深夜酒類提供との明確な違い
  • 判断基準になる「照度」「接待行為」などの要素
  • 開業時に気をつけるポイント

を行政書士の視点から分かりやすく解説します。

目次

風俗営業の対象になるのはどんな店?

「風俗営業」と聞くと、「性風俗」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、それらは「特殊性風俗営業」といい、「風俗営業」とは違うものです。

風俗営業とは、風営法で定められた 「特定の設備・接待行為を伴う営業」 のことを指します。
特に飲食店と関係が深いのは、「1号営業」「2号営業」「3号営業」です。

風俗営業1号営業(社交飲食店)

1号営業(社交飲食店)とは、キャバクラやスナックのように、客の接待をして客に遊興または飲食させる営業をいいます。

以下のような行為を提供する飲食店は、深夜酒類提供飲食店の届出ではなく、必ず風俗営業の1号営業の許可 が必要になります。

  • 隣に座ってお酒をつぐ
  • 一緒にカラオケを歌う
  • 会話で相手を楽しませる(ホステス的接待)

風俗営業2号営業(低照度飲食店)

店内の明るさが 10ルクス以下 の飲食店は、接待行為がなくても風俗営業の対象となります。

barなどの「暗い店内で飲食を提供するお店」が対象となる法律です。
店内の照度は、風営法の規制で5ルクス以下にはできないため、店内の明るさが6ルクス以上10ルクス以下のお店が対象となることになります。

風俗営業3号営業(区画席飲食店)

喫茶店やバーなどの客に飲食させる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5㎡以下の客席を設ける営業が対象となります。

居酒屋やカフェで個室を作りたい場合、この風営法の3号営業に該当する可能性があることに注意する必要があります。

深夜酒類提供飲食店(深酒)とは?

深夜酒類提供飲食店の届出は、お酒を提供することをメインとする飲食店が、深夜(午前0時から午前6時まで)に営業するために必要な届出となります。

深夜酒類提供飲食店(いわゆる“深夜営業”)も風営法の規制対象には含まれますが、社交飲食店(接待を伴う飲食店や低照度飲食店 のように「風俗営業許可」が必要な営業とは異なります。

深夜酒類提供飲食店の場合は、営業許可ではなく「深夜酒類提供飲食店営業開始届」の提出が必要となる届出制で、風俗営業とは別枠の扱いです。

深夜酒類提供飲食店については、こちらの記事で詳しく解説しています。

深酒の場合は、営業開始の 10日前までに警察署へ届出をすることで営業できます。

しかし、以下の条件がそろっている必要があります

  • 接待行為をしない
  • 照度20ルクス以下にならない
  • 客がダンスをするような設備がない

上記のどれかひとつでも該当すると、深酒ではなく 風俗営業許可が必要 になります。

深夜酒類提供飲食店営業と風俗営業の違い

風俗営業と深夜営業の違い

風俗営業は、風俗営業法で深夜0時以降(特定の地域では午前1時以降)の営業はできないこととなっています。
一方で、深夜酒類提供飲食店営業とは、深夜0時から午前6時までの営業に必要な届出となります。

では、「風俗営業許可」を取得して、さらに「深夜酒類提供飲食店営業開始届」を出せば、深夜0時以降も風俗営業が行えるか?というとそうではありません。

風俗営業許可に該当する場合、深夜酒類飲食店営業を行うことはできないからです。

風俗営業に該当する場合には「風俗営業許可」の取得、風俗営業に該当しない飲食店で深夜営業を行いたい場合には「深夜酒類提供飲食店営業開始届」が必要となるということです。

風俗営業と深夜営業の代表的な違いは以下の通りです。

項目深夜酒類提供飲食店風俗営業
営業時間0時以降に酒類提供基本的には深夜0時以降の営業不可
必要書類・手続き届出のみ許可申請(審査あり)
接待行為禁止認められる(1号に限る)
明るさ(照度)20ルクス以上が必要10ルクス以下は2号営業
審査期間即日55日~2ヶ月程度
図面・設備基準比較的厳しい非常に厳しい

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店舗オーナーが特に注意すべきポイント

冒頭にも言いましたが、「風俗営業」と「性風俗」とは全く違うものです。

『風俗営業は性風俗のことだ』と勘違いしたまま飲食店を開業すると、知らず知らずのうちに、風営法の無許可営業になってしまう可能性があります。

また、「深夜営業(深夜酒類提供飲食店営業)」と「風俗営業」とも、全く違うものです。

飲食店を開業するオーナーは最低でも以下の内容は把握しておく必要があります。

  • 風俗営業とは性風俗のことではない
  • 風俗営業と深夜酒類提供飲食店営業とは違う
  • 風俗営業は許可制・深夜酒類提供飲食店営業は届出制
  • 接待を伴う場合は風俗営業許可が必要
  • 風営法の無許可営業となった場合には厳しい罰則がある

知らず知らずのうちに「風営法の無許可営業」とならないように、飲食店の経営には以下の対策をする必要があります。

照度(明るさ)を必ず計測すること

店舗(客室)の明るさが10ルクスを下回る場合、風営法の2号営業(低照度飲食店)となります。

「これくらいで大丈夫だろう」という感覚では危険です。警察署が持つ照度計で測ると体感より暗い場合が多く、深夜酒類でも風俗営業扱いされることがあります。

深夜酒類提供飲食店営業の場合、客室の明る際は20ルクス以上必要になります。
店内を暗い雰囲気にしたい場合、風営法の対象と可能性があることを理解していないといけません。

接待行為にあたらないよう徹底する

店員が隣に座るだけでも「接待」と判断されるケースがあります。
特に小規模バーでは、知らないうちに該当してしまうリスクが高めです。

警察庁が発表している「風営適正化法の概要」では、以下のような具体例が接待行為に当たるとされています。

  • 談笑・お酌等:特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒などの飲食物を提供したりする行為
  • 踊り等:特定少数の客に対して、専らその客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、歌舞音曲、ダンス、ショー等を見せ、又は聞かせる行為
  • 歌唱等:特定少数の客の近くにはべり、その客に対して歌うことを勧奨し、もしくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、もしくはほめはやす行為又は客と一緒に歌う行為
  • 遊戯等:特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為
  • その他:客と身体を密着させること、手を握ること等客の身体に接触する行為

このように、接待行為に該当する具体例は幅広いため、これらと誤解されるような行為につながる営業は行わないことが重要です。

深夜酒類提供飲食店営業は「届出」とはいえ図面が重要

図面が不備だと受付されません。
厨房、客席、トイレ、出入口、カウンターなどの 位置関係が一目で分かる図面 が必要です。

深夜に酒類を提供する営業は風営法の届出対象であり、届出書には営業所の平面図や照明・音響の配置など、警察側が求める形式の図面の添付が必要です。
保健所に提出した図面(飲食店営業許可申請で使用した図面)は、確認項目や目的が異なるため、そのまま流用できない場合が多いのでご注意ください。

まとめ:誤った判断は無許可営業に。必ず専門家に相談を

深夜酒類提供と風俗営業は、
似ているようで全く違うルールが適用されるものです。

特に、

  • 照度の基準
  • 接待行為の有無
  • 営業形態の細かな違い

これらは自己判断が難しいため、
開業前に行政書士へ相談することで、リスクを避けられます。

店舗の形態が少しでも曖昧な場合は、
「深酒でいけるのか」「風俗営業許可が必要か」
一度チェックしてみてください。

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深夜酒類提供飲食店営業を開始するには、さまざまな要件をクリアしなければなりません。
届出に必要な図面の作成は多くの手間と時間を必要とします。
手続きの不備や遅れが原因で開業スケジュールが狂ってしまうことも…。

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