一般貨物自動車運送事業の法人成り|許可はそのまま引き継げる?

一般貨物自動車運送事業の法人成り|許可はそのまま引き継げる?

個人事業主として一般貨物自動車運送事業を営んでいる方の中には、事業規模の拡大や取引先との関係、節税などをきっかけに法人化を検討する方もいるでしょう。

一般的な事業であれば、法人を設立して個人事業から法人へ事業を移していくことができます。
しかし、一般貨物自動車運送事業は国土交通大臣の許可が必要な許可事業です。

そのため、
「個人で取得した運送業許可を、そのまま法人名義に変更できる?」
「法人を設立したら、もう一度新規許可を取らないといけない?」
「個人から法人へトラックや営業所をそのまま引き継げる?」
といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、個人で取得した一般貨物自動車運送事業の許可が、法人を設立しただけで自動的に法人へ引き継がれるわけではありません。

個人から法人へ事業を引き継ぐ場合には、原則として「一般貨物自動車運送事業の譲渡譲受認可」という手続きを検討することになります。

この記事では、一般貨物自動車運送事業を個人から法人へ法人成りする場合の手続きや注意点について解説します。

目次

個人で取得した運送業許可は法人にそのまま使えない

一般貨物自動車運送事業の許可は、営業所や車庫、車両などだけを見て与えられているものではありません。

「誰が一般貨物自動車運送事業を経営するのか」という事業者についても審査されたうえで許可されています。
そのため、個人事業主として許可を受けている場合、その許可を受けているのはあくまでも「個人」です。

自分が代表取締役となって会社を設立したとしても、個人と法人は法律上別の主体となります。

例えば、「○○運送 代表○○太郎」という個人事業から、「株式会社○○運送 代表取締役○○太郎」へ変更する場合、代表者が同じ人物であっても、許可上は同じ事業者として扱われるわけではありません。

したがって、法人を設立して会社名だけ変更すれば、そのまま一般貨物自動車運送事業を続けられるというものではないので注意が必要です。

法人成りでは「譲渡譲受認可」を利用できる

個人事業として行っている一般貨物自動車運送事業を、新しく設立した法人へ引き継ぐ場合には、一般貨物自動車運送事業の譲渡譲受認可という方法があります。

貨物自動車運送事業法第30条では、一般貨物自動車運送事業の譲渡し・譲受けについて、国土交通大臣の認可を受けなければ効力を生じないと定められています。

つまり、

個人事業主(譲渡人)→ 一般貨物自動車運送事業許可を譲渡 → 新しく設立した法人(譲受人)

という形で事業(許可)を引き継ぐことになります。

そのため、「法人化するなら必ずゼロから一般貨物自動車運送事業の新規許可を取り直さなければならない」というわけではありません。

適切に譲渡譲受認可を受けることで、個人で行ってきた一般貨物自動車運送事業を法人へ承継することができます。

譲渡譲受認可では法人側も審査される

譲渡譲受認可は、単に「個人の許可を法人名義へ書き換える手続き」ではありません。

一般貨物自動車運送事業を譲り受ける法人についても、営業所や車庫、車両、資金計画、法令遵守体制などが審査されます。
近畿運輸局でも、譲渡譲受認可申請について、経営許可申請と同様に資金計画に関する審査を行うことが案内されています。

個人事業主からの法人なりでもそれは同じです。
また、法人成りで特に注意したいのが役員法令試験です。

一般貨物自動車運送事業の法令試験は、新規許可申請だけでなく、事業の譲渡・譲受の認可申請についても原則として実施されます。

法人が譲受人となる場合は、認可後に一般貨物自動車運送事業に専従する常勤役員のうち1名が受験し、法令試験に合格しなければなりません。

例えば、個人事業主として一般貨物自動車運送事業を営んでいるAさんが、新たに株式会社を設立し、自らが代表取締役となって事業を法人へ引き継ぐケースを考えてみましょう。

Aさんは、個人で一般貨物自動車運送事業の許可を取得した際にも法令試験を受験し、すでに合格しているはずです。

しかし、法人成りに伴う譲渡譲受認可では、過去に個人事業主として法令試験に合格していたとしても、それだけで今回の法令試験が免除されるわけではありません。

個人事業主であるAさんと、Aさんが代表取締役を務める株式会社は法律上別の事業者です。

そのため、新たに設立した法人が事業を譲り受ける譲渡譲受認可申請では、代表取締役であるAさんが改めて法令試験を受験することになります。

法人成りを予定している場合は、法人設立や譲渡譲受認可の書類準備だけでなく、役員法令試験の日程や試験対策についても考えておく必要があります。

特に近畿運輸局では、法令試験は原則として隔月で実施されているため、試験の時期によっては法人成り全体のスケジュールにも影響します。

「今まで個人で問題なく運送業を営んできたから、そのまま法人へ変更できる」と考えるのではなく、法人側について改めて審査を受ける手続きであることを理解して準備を進めましょう。

譲渡譲受認可申請にはどのような書類が必要?

一般貨物自動車運送事業の譲渡譲受認可申請では、単に譲渡譲受契約書を提出すればよいわけではありません。

譲受人となる法人が一般貨物自動車運送事業を適切に経営できるかについても審査されるため、新規許可申請に準じた多くの書類を準備する必要があります。

国土交通省が公開している一般貨物自動車運送事業の譲渡譲受認可申請書では、主に次のような添付書類が示されています。

  • 譲渡譲受契約書の写し
  • 譲渡し・譲受けの価格の明細書
  • 法人に関する書類
  • 貨物自動車運送事業法第5条の欠格事由に該当しない旨を証する書類
  • 事業計画の新旧対照表
  • 事業用自動車の運行管理等の体制を示す書類
  • 必要な資格を有する運転者の確保計画
  • 事業開始に要する資金及び調達方法
  • 残高証明書等
  • 営業所・車庫・休憩睡眠施設などの案内図、見取図、平面図(求積図)、写真(※)
  • 都市計画法等の関係法令に抵触しない旨の宣誓書
  • 営業所・車庫などの使用権原を証明する書類
  • 車庫前面道路の幅員証明書等(※)
  • 事業用自動車の使用権原を証明する書類
  • 法令遵守に関する宣誓書
  • 役員名簿
  • 役員全員の履歴書

などです。

そのため、法人成りに伴う譲渡譲受認可は、単なる「個人名義から法人名義への変更手続き」と考えない方がよいでしょう。

すでに個人で一般貨物自動車運送事業の許可を取得している場合でも、譲受人となる法人について改めて確認・審査される事項があり、準備する書類も多くなります。

さらに、譲渡譲受認可では、通常の新規許可申請とは異なり、譲渡譲受契約書など、事業の承継に関する書類も必要になります。

「個人で許可を持っているから法人化は簡単な名義変更で済む」と考えず、法人設立前から必要書類や手続きのスケジュールを確認しておくことが重要です。

法人成りで譲渡譲受認可を行うメリット

ここまで解説したように、法人成りに伴う譲渡譲受認可でも、新規許可申請に近い内容の書類を準備する必要があります。
また、役員法令試験を受験する必要があり、経営許可申請と同様に資金計画についても審査されます。

ここまで聞くと、「それなら、法人で新しく許可を取り直しても同じでは?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、法人成りで譲渡譲受認可を利用することには、新規許可申請と比較して次のようなメリットがあります。

譲渡譲受認可のメリット
  • 登録免許税が0円
  • 標準処理期間が1〜3ヶ月

登録免許税がかからない

一般貨物自動車運送事業の新規許可を受けた場合、12万円の登録免許税を納付する必要があります。

一方、一般貨物自動車運送事業の譲渡譲受認可については、登録免許税はかかりません。

そのため、法人成りの際に法人で新たに許可を取得する場合と比較すると、登録免許税12万円を負担する必要がないことは、譲渡譲受認可のメリットの一つといえます。

譲渡譲受認可は標準処理期間が短い

標準処理期間とは、申請を出してから許可や不許可などの処分を下すまでに通常要する標準的な目安の期間をいいます。

一般貨物自動車運送事業の場合

「新規許可→標準処理期間:3ヶ月〜5ヶ月」
「譲受譲渡認可申請→標準処理期間:1ヶ月〜3ヶ月」
と、2か月程度、審査期間が短くなります。

実際には、新規許可申請で「5ヶ月〜6ヶ月」、譲渡譲受認可申請(法人なり)で「3ヶ月〜4ヶ月」とかかることもあります。
申請のタイミングによっては、役員法令試験のタイミングでさらに時間がかかることも。

したがって、「譲渡譲受なら必ず1~3か月で法人成りできる」と考えるのではなく、余裕を持って手続きを進めることが重要です。

それでも、新規許可の標準処理期間が3~5か月であるのに対し、譲渡譲受認可は1~3か月とされているため、法人成りを検討するうえで大きなメリットの一つといえるでしょう。

まとめ

個人事業で一般貨物自動車運送事業を営んでいる方が法人化する場合、必ずしも法人として新規許可を取得し直す必要はありません。

譲渡譲受認可を受けることで、個人で営んでいる一般貨物自動車運送事業を法人へ引き継ぐ方法があります。

ただし、法人成りだからといって簡単な名義変更だけで済むわけではありません。

譲渡譲受認可でも、新規許可申請に近い内容の書類を準備する必要があり、資金計画の審査や役員法令試験への対応も必要となります。

近畿運輸局における譲渡譲受認可の標準処理期間は1~3か月と、新規許可の3~5か月より短く設定されていますが、申請内容や補正、法令試験の日程などによっては、認可までに時間を要することもあります。

さらに、申請前には必要書類の準備や法人設立に向けた調整なども必要です。

そのため、「法人化しよう」と決めてから手続きを確認するのではなく、法人化を検討し始めた段階から、運送業の許認可を含めた手続きやスケジュールを確認しておくことが大切です。

余裕を持って準備を始めることで、法人への事業承継を計画的に進めやすくなるでしょう。

大阪府で一般貨物自動車運送事業の法人成りをご検討の方へ

一般貨物自動車運送事業の法人成りは、単に会社を設立して個人から法人へ名義を変更すればよいわけではありません。

個人で取得した運送業許可を法人へ引き継ぐためには、譲渡譲受認可申請が必要となります。

譲渡譲受認可では、新規許可申請に近い内容の書類を準備する必要があり、資金計画の審査や役員法令試験への対応も必要です。

さらに、法人設立のタイミングや営業所・車庫・車両などの引継ぎについても考えながら手続きを進めなければなりません。

勝浦行政書士事務所では、大阪府を中心に一般貨物自動車運送事業の法人成りに伴う譲渡譲受認可申請をサポートしております。

「個人で運送業をしているが、そろそろ法人化したい」
「法人を設立する前に、運送業の手続きを確認しておきたい」
「法人成りを考えているが、何から始めればよいか分からない」

このような場合は、法人を設立してしまう前に一度ご相談ください。

現在の許可内容や事業計画を確認したうえで、法人への事業承継に必要な手続きを整理し、譲渡譲受認可申請までサポートいたします。

一般貨物自動車運送事業の法人成りをご検討の方は、お気軽に勝浦行政書士事務所までお問い合わせください。

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