深夜酒類提供飲食店営業(いわゆる「深夜営業」)の届出を行う際、最も重要で、最も時間がかかるのが図面の準備です。
深夜営業(深夜酒類提供飲食店営業)の申請について調べていると、多くの方がこんなところで手が止まります。
- 図面って、どこまで正確に描けばいいの?
- 飲食店営業許可のときの図面は使えないの?
- 警察署に出してダメと言われたらどうしよう…
実際、深夜営業の申請で一番つまずきやすいのが「図面」です。
✔ 図面で失敗しやすいポイント
✔ 自分で作る場合の注意点
を中心に、図面作成で不安を感じている方向けに解説します。
深夜営業(深夜酒類提供飲食店営業)とは?
深夜営業(深夜酒類提供飲食店営業)とは、一般的に午前0時から午前6時までの時間帯に、主として酒類を提供する飲食店営業を指します。
この営業を行う場合、必要になるのが「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」です。
この届出は、保健所ではなく警察署(生活安全課経由で公安委員会)へ行う手続きであり、風営法の規制対象となります。
そのため、提出書類の中でも
「営業所の構造・設備を確認するための図面」が非常に重視されます。
「そもそも深夜酒類提供飲食店営業とは?」という方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
深夜酒類提供飲食店営業開始届の審査の中心となるのが「営業所の構造を示す図面」です。
なぜ深夜営業の申請では「図面」が重要なのか
先ほどご説明したとおり、深夜酒類提供飲食店営業の開始届は風営法の対象となります。
そのため、飲食店営業許可とは管轄が異なる点に注意が必要です。
飲食店営業許可の管轄は保健所ですが、深夜酒類提供飲食店営業の管轄は公安委員会(警察)となります。
深夜営業の届出では、次の点が確認されます。
- 風俗営業に該当する設備がないか
- 客室・厨房・トイレなどの配置が適切か
- 見通しを妨げる設備がないか
- 明るさは基準以上であるか
これらは、現地調査だけでなく図面によって事前に判断されます。
つまり、図面の内容=営業の適法性を判断する材料という位置づけです。
図面が不十分だと、
- 届出が受理されない
- 何度も補正を求められる
- 最悪の場合、無届営業と判断される
といったリスクがあります。
深夜営業の申請に必要な図面とは?
深夜営業(深夜酒類提供飲食店営業)の届出で提出する主な図面には以下のものがあります。
- 営業所平面図
- 営業所求積図
- 客席等求積図
- 音響・照明設備図
よくあるご質問として、
「飲食店営業許可を取得した際に使用した図面は、そのまま使えないのですか?」
というものがあります。
結論からお伝えすると、飲食店営業許可の取得時に使用した図面を、深夜酒類提供飲食店営業開始届出に流用することはできません。
その理由は、それぞれの手続きで根拠となる法律が異なるためです。
飲食店営業許可は「食品衛生法」に基づく手続きですが、深夜酒類提供飲食店営業は「風俗営業法(風営法)」の対象となります。
そのため、深夜酒類提供飲食店営業の届出では、風営法の基準に適合した図面を新たに用意する必要があります。
【よくある誤解】飲食店営業許可の図面は使えない

繰り返しになりますが、「すでに飲食店営業許可を取ったときの図面があるから、それを使えばいい」というのは間違いです。
これは単なる「形式の違い」ではなく、そもそも図面を見る目的・判断基準がまったく違うためです。
「飲食店営業許可」と「深夜酒類提供飲食店営業」による図面の違いは以下のものがあります。
飲食店営業許可の図面
- 根拠法令:食品衛生法
- 管轄:保健所
- 目的:
- 衛生的に飲食物を提供できるか
- 厨房設備が基準を満たしているか
つまり、
「食の安全」を確保するための図面です。
深夜酒類提供飲食店営業の図面
- 根拠法令:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)
- 管轄:警察署(公安委員会)
- 目的:
- 風俗営業に該当しないか
- 接待行為が行われない構造か
- 営業実態が法令に適合しているか
こちらは、
「営業内容・営業形態」を判断するための図面です。
同じ「図面」でも、見ているポイントが全く違うというのがお分かり頂けるかと思います。
風営法特有のチェック項目が反映されていない
飲食店営業許可に提出した図面には、風営法特有のチェック項目が反映されていません。
深夜営業の図面では、店舗の状況によって、
- 照度(明るさ)
- 出入口・窓の位置と視認性
- 客室の範囲と区分
- 店外からの見通し
といった、風営法特有の視点が求められます。
「一部修正すれば使える」の落とし穴
「じゃあ、飲食店の図面をベースに直せばいいですよね?」という質問もよく承ります。
しかし実務上は、
- 何を直せば足りるのか分からない
- 直したつもりでも、警察の視点とズレている
- 結果的に全面修正になる
というケースが非常に多いです。
見た目が似ていても、考え方が別物だからです。
「飲食店営業許可で使用した図面」は、「深夜酒類提供飲食店営業開始届」には流用できないと思っていた方が無難です。
図面を流用して失敗した実例

ここからは、実際にあったご相談内容をもとに、個人や店舗が特定されない形でご紹介します。
「自分は大丈夫」と思っている方ほど、ぜひ一度目を通してみてください。
「図面は問題ないはず」が現地確認でストップ
業態:カフェバー
状況:ネットのサンプル図面を参考に作成
図面自体は整って見えたものの、
現地確認で次の点を指摘されました。
- 実際には仕切りが追加されていた
- 照明が想定より暗く、雰囲気が異なる
- 見通しが図面より悪い
警察署からは、
「図面と実態が違います」
「この状態では受理できません」
と判断され、
営業形態の見直し+図面修正が必要に。
オーナー様は
「図面が通れば終わりだと思っていた」と話されていました。
「出してみないと分からない」は一番リスクが高い
深夜酒類提供飲食店営業の届出は、
- ダメだったら直せばいい
- とりあえず出してみよう
という進め方が、最も時間と労力を消耗します。
一度指摘が入ると、
- 警察署の目が厳しくなる
- 修正のハードルが上がる
- 開業スケジュールに影響する
という負の連鎖に入りがちです。
図面作成の重要ポイント
深夜酒類提供飲食店営業開始届では、図面=営業実態を証明する資料です。
見た目が整っているかよりも、
「警察がこの店の営業形態を正しく判断できるか」
がすべてです。
ここでは、警察署が実際に図面のどこを見ているのかを軸に、作成時の重要ポイントを解説します。
風営法における図面作成のルール
深夜酒類提供飲食店営業開始届の図面は、『作ればなんでも良い』というものではありません。
風営法の基準に適合した図面を作成する必要があります。
- タイトルと縮尺を記載する
- 作成する図面の方角を統一する
- 営業所(青)、客室(赤)、調理場(緑)で囲む
- 営業所の入口を明記する
- 家具などは、上から見た寸法と横から見た寸法を記載
- 客室内の2カ所(縦横で最も広い部分)の寸歩を記載
風営法では、視界を妨げるパーテーションや観葉植物なども指摘材料となります。
客室内で高さ1メートルを超える設備(仕切り、家具、植物など)を設置して「見通しを妨げない」ことが重要となります。そのため提出する図面にも設備の高さを記入する必要があります。
寸法・縮尺は「正確さ」が最優先
当然のことながら寸法は正確に記載する必要があります。
また、各図面の縮尺や方位を揃えることも大切です。
縮尺に厳格な決まりはないですが、1/50または1/100が一般的です。
求積図では面積を記載しますが、面積の計算は小数点第4位まで行い、図面への記載は小数点第2位までするのが一般的です。
家具・設備は「全部」描く
深夜営業の図面では、
- カウンター
- テーブル
- ソファ
- 椅子
- 固定棚・間仕切り
などすべての家具や設備を記載し、寸法も記載する必要があります。
「細かすぎるのでは?」と思われがちですが、警察は家具や設備の配置から次のことを判断します。
- 見通しを妨げるような配置になっていないか
- 厨房と客席の境界が不明となっていないか
- 特定客を想定した配置ではないか(半個室などになっていないか)
家具や設備の寸法・位置を正確に記載し、実際の構造と図面を一致させることが重要です。
まとめ
深夜営業を始めるために必要な図面は、風営法の基準に適合したものを用意する必要があります。
この図面作成が、深夜酒類提供飲食店営業開始届においては大きなハードルとなります。
飲食店営業許可の図面を深夜酒類提供飲食店営業開始届に使おうとしている方ほど、一度立ち止まって確認することをおすすめします。
- 図面チェックだけの相談
- 修正が必要かどうかの判断
- 一から作り直すべきかの整理
状況に応じたサポートが可能です。
「出す前に確認しておけばよかった」となる前に、弊所までご相談ください。





