「設備投資をしたいけれど、資金に余裕がない」
「新しいサービスを始めたいが、初期費用が重たい」
そんな悩みを抱える中小企業・個人事業主の強い味方がものづくり補助金です。
中小企業庁が実施しているこの補助金制度は、製品開発や業務効率化などに必要な設備投資の一部を支援してくれる大変有用な制度です。
しかし、「法人じゃないと申請できないのでは?」と思っている個人事業主の方も少なくありません。
この記事では、『個人事業主でも申請可能か?』という疑問に答えつつ、活用方法や注意点、申請のポイントをわかりやすく解説します。
ものづくり補助金とは?
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)」は、生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行う事業、または業務プロセスの改善などに取り組む中小企業や小規模事業者を対象にした補助金です。
- 対象事業者:中小企業、小規模事業者(個人事業主含む)
- 補助率:1/2〜2/3(小規模事業者や賃上げ要件等で変動)
- 補助上限額:通常枠(一般型)で最大2500万円(2025年4月現在)
- 対象経費:機械装置費、システム構築費、外注費、技術導入費など
- 公募頻度:年に2〜3回(通常は数ヶ月おきに実施)
個人事業主でも申請できるのか?
結論から言うと、個人事業主でも申請可能です。
ただし、すべての個人事業主が対象になるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。
- 中小企業基本法に定める中小企業者であること
- 小規模企業者・小規模事業者であること
- 青色申告をしており、財務状況がある程度明らかであること
- 将来的な事業拡大やイノベーションに取り組む意志があること
申請の流れ

ものづくり補助金の申請はオンライン「Jグランツ(電子申請)」を通じて行います。以下は一般的な流れです。
「gBizIDプライム」アカウントの取得には審査期間があり、通常は1週間から2週間程度の日にちを要することに注意が必要。
ものづくり補助金の申請には、認定支援機関の確認書は必須ではありません。
しかし、過去申請者の7割以上が認定支援機関などの外部支援者を利用しています(参考:ものづくり補助金総合サイトデータポータル)
認定支援機関などの外部支援者に依頼する場合、支援者を探す時間も必要になりますので、補助金の応募に関する情報を早期に取得することが重要です。
認定支援機関とは
認定支援機関とは、経営革新等支援機関として国から認定を受けた機関(個人や法人、中小企業支援機関)のことをいい、税理士や商工会などがあります。要は、企業支援に関する専門知識や実務経験をもった機関として国から認定されている専門家です。
平成24年に「中小企業経営力強化支援法」が施行され、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定する制度が設けられました。
認定支援機関は、中小企業の経営課題解決をサポートし、経営の強化を目指す役割を担います。
事業再構築補助金などは、申請するためには認定支援機関への依頼が必要になります。
補助金の注意点と落とし穴
よくある補助金の勘違いや注意点を4つ紹介します。
補助金は「後払い」
『補助金を申請して採択されれば、お金が入ってきて、そのお金を使って機械を購入したり、外注費に充てることができる』というのが、補助金に関する多い勘違いです。
補助金は後払いです。つまり、まずは自己資金または借入で立替えが必要になります。
資金繰り計画が甘いと、補助金が下りても経営が苦しくなります。
「補助金は事業のためのお金がもらえる」というのは勘違いです。「事業にかかったお金を補助」してもらえるのが補助金です。
補助金は返済しなければならない可能性がある
『補助金は貰ったら返さなくて良い』というのも大きな勘違いです。
原則として、補助金は返済不要ですが、補助金をもらった事業で大きな利益が出た場合、返済する必要があります。
大きな利益が出た場合に補助金を返納する制度を「収益納付」といいます。ネット上で「補助金は返済不要」という言葉を目にした方もいらっしゃるかもしれませんが、絶対に返さなくて良いというわけではありません。
収益納付とは、補助事業(補助金をもらった事業)で一定の利益が出た場合、交付された補助金の一部または全額を国に返納する制度です。
多くの補助金では収益納付の規定が設けられており、ものづくり補助金にも収益納付の規定は設けられています。
経費の使い方に厳格なルールあり
補助対象外の経費を含めたり、計画と違う補助金の使い方をすると、全体の補助金が減額されたり、交付取り消しとなることもあります。
補助金は、事業期間中に支払った経費のうち、補助対象となってる特定の経費について、事業終了後の確定検査を経て補助される仕組みですが、対象外の経費を含めたり、当初の予定と違った補助金の使い方をすると、『これ聞いていた計画と違うのでお金は払えません』となってしまうのです。
事前に公募要領を熟読する必要がありますが、公募要領はA4の書類が40ページにもなるものが多いので、不安な方は専門家に相談されることをお勧めします。
補助金は貰ってからも報告が必要
「補助金はお金をもらったら終わり」というものではありません。
補助金をもらう前にも、補助事業が終わった後にも手続きが必要です。
補助金の申請後、交付決定から補助事業の終了後の報告の流れは以下のようになります。
補助金の申請を行い、無事に採択されれば、交付申請を行います。
交付申請で提出した書類に問題がなければ交付決定の手続きを行います。
交付決定日をもって補助事業を開始することができます。
補助事業の期間中、事務局担当者が補助事業をチェックする「中間検査」が行われる場合があります。
補助事業が完了すると、「実績報告書」を必要書類と併せて事務局に提出します。
実績報告書を提出しないと補助金は支払われません。
補助金事務局が提出された「実績報告書」を精査して補助事業の成果などを確認します。
確定検査に問題がなければ補助金額が確定します。
補助金額が確定すると、「補助金額確定通知書」が送られてきます。補助金額確定通知書を受領後、精算払の請求を行います。
補助事業終了後5年間、補助事業の成果の事業化状況等について、毎年「事業化状況・知的財産権等報告書」及び「事業化状況等の実態把握調査票」を提出する義務があります
補助事業の途中で事業の変更がある場合や、補助金を使用して購入した機器などの処分が発生する場合なども、その都度、事務局に申請や報告が必要になります。
申請から交付決定、事業実施、報告書作成まで長期にわたるため、計画性と管理能力が問われます。
まとめ
個人事業主でも、一定の条件を満たせばものづくり補助金を活用することは可能です。
特に、製造業やサービス業、IT導入などでの革新的な取組みを行いたいと考えている方にとっては、大きなチャンスとなります。
しかし、制度の複雑さや審査の厳しさもあり、自己判断での申請にはリスクも伴います。
ものづくり補助金は認定支援機関のサポートを必須としないので、全体の3割程度の申請者は、外部の支援機関を使わず補助金申請しています。
ただ、補助金に関してあまり知識がない事業者にとっては、申請のハードルが高いだけでなく、申請から採択された後、補助事業の期間、補助事業が終わった後、「どのような手続きが必要か」「やってはいけないことはなにか」などを全て理解することは難しいかもしれません。
補助金は国が事業に対してお金を払ってくれる大変有り難い制度である分、報告やルールが厳格に定められています。少しでも不安な方は専門家に相談することもご検討ください。