この記事を読んで欲しい人
相続発生した時にどうすれば良いのか知りたい方
- 相続が起きた時の問題点
- 相続人には選択権がある
- 遺産分割の手続き
- 遺言による分割
- 遺産分割協議
相続が起きた時の問題点
相続とは、人が亡くなったことにより開始し、その人に帰属していた一切の権利義務を相続人に継承させる制度のことをいいます。
その人が持っていた現金や土地などの財産だけでなく、借金などの負債を含めた全ての権利義務を引き継ぐことになります。
まず問題となるのが、相続が発生したときに、『何をいつまでにすれば良いのか分からない』ということではないでしょうか。
相続発生後の主なタイムスケジュールは以下になります。
- 相続発生から3ヶ月以内に単純相続・限定承認・相続放棄の選択
- 相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に所得税の申告
- 相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告
亡くなった方にどの程度の財産があるのか、負債はあるのか、財産より負債の方が多くはないのか、相続する人は誰と誰なのかを調べなければいけません。
次に問題となるのは、遺産の分け方ではないでしょうか。
ここで、注視すべきデータがあります。令和3年の家庭裁判所における遺産分割事件の件数のデータですが、その数はなんと全国で13,447件もあります。
遺言書が残されていない場合は、遺産分割協議によって遺産を分けることになります。
法定相続分で円満に相続できれば良いですが、実際には相続人間で遺産の分け方を巡って争うことが多いということになります。
また、遺言書を残していた場合でも、遺留分を侵害する遺言書であれば、それも残された方々の争いを招く種になりかねません。
遺言書を残すことは、遺産争族を防ぐ有効な手段ですが、内容によっては争いの種になることは気をつけなければなりません。
データが物語っているように、相続人間で争いが生じてしまうことが最大の問題になります。
相続人には選択権がある
民法は、相続人に対して、相続財産を承継するかどうかの選択する自由を保障し、相続人には単純相続・限定承認・相続放棄の3つの選択肢を与えています。
相続人は、自己のために相続の開始があっとことを知った時から3ヶ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない
民法915条
この期間を熟慮期間といいます。相続人が複数いるときは、熟慮期間は各相続人において、別々に進行すると解されています。
例えば、Aさんが亡くなり、BさんとCさんが自身に相続が発生したことを知った日が違えば、それぞれ熟慮期間の期限は変わります。
なお、3ヶ月の熟慮期間は、相続財産の内容が複雑で調査に時間がかかる場合、相続人などの利害関係人または検察官により、家庭裁判所にこの期間の延長を請求することができます。
遺産分割の手続き
遺産分割の方法は、「遺言による分割」「遺産分割協議」「家庭裁判所の調停・審判」があります。
遺言による分割
遺言は法定相続分に優先します。ただし、兄弟姉妹を除く法定相続人には遺留分という権利が認められているため、遺留分を侵害する遺言書であれば、受遺者に対して遺留分の侵害を請求をすることができます。
遺言には一般的に、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の方式があります。
遺言は法定された方式に従わなければ、その効力を生じません。
主に利用されるには、「公正証書遺言」または「自筆証書遺言」ではないでしょうか。この二つの違いについては、過去記事『自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを解説』をご覧ください。
遺産分割協議
共同相続人は協議によって遺産の分割を行うことができます。
では、遺言書があった場合に、遺言書と異なる遺産分割をすることは不可能なのでしょうか。
民法では、「いつでも共同相続人は遺産分割協議により遺産分割をすることができる」と規定しています。
共同相続人は、被相続人による分割禁止の遺言がある場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部または一部の分割をすることができる。
民法907条
結論から言えば、遺言書の内容と異なった遺産分割をすることは可能です。しかし、それにはいくつかの条件があります。
遺産分割協議により遺言書と異なる遺産分割をする条件
- 遺言書で遺産分割が禁止されていない
- 遺言執行者の同意がある
- 相続人と受遺者全員が同意している
遺言書と異なる遺産分割を行うことは可能ですが、平成3年に『特定の財産を特定の相続人に相続させる内容の遺言の場合、遺言者の死亡によって、財産は直ちに確定的に相続人に帰属する』という判例があるため、相続の実務では遺言書の内容が遺産分割協議よりも優先されています。
遺産分割協議は共同相続人全員で行う必要があり、相続人の一部を欠いた遺産分割協議は無効となります。
遺言書が残されていない場合の遺産分割協議では、遺産をどのように分けてもよく、具体的相続分に従わない分割も有効となります。
例えば、『特定の人に全ての財産を相続させる』という分け方も有効となります。
遺産分割協議の方式には特別な決まりはありません。
共同相続人の全ての人が合意内容を明確にし、合意内容が記載され、各相続人により押印がなされた遺産分割協議書を作成するの通常です。