運送業を個人事業として始めた後、事業の成長や税務上のメリットなどを背景に「法人化」を検討する方は少なくありません。
しかし、運送業(一般貨物自動車運送事業)は、許可制であるため、法人化に伴う「単なる名義変更」では済まされない手続きがあります。
この記事では、一般貨物自動車運送事業における、「法人化」を行う際の手続きについて解説します。
なぜ運送業では「法人化=名義変更」では済まないのか?
貨物自動車運送事業法に基づく一般貨物自動車運送事業許可や利用運送事業登録などは、事業者(法人または個人)単位で与えられています。
つまり、個人名義で取得した許可は、何もせずに法人にそのまま引き継ぐことができません。
新たに法人として事業を行う場合、許可の譲渡譲受認可申請を行う必要があります。
一般貨物自動車運送事業の法人化を行う際、「新たに法人でも新規許可を取得する」という手段もあります。
「許可の譲渡譲受申請を行うのか」または「新たに許可を取得するのか」のどちらが良いかは状況によって変わってきます。
特別な事情がなければ、許可の譲渡譲受認可申請を行うことが一般的です。
事業の譲渡譲受については以下の記事で詳しく解説しています。
運送業の法人化の流れ
株式会社や合同会社などを設立する
新規許可の標準処理期間は3〜5ヶ月、譲渡譲受の標準処理期間は1〜3ヶ月(実際は3ヶ月程度かかる)
車検証を法人名義に書き換えします。
新規許可申請を行った場合、個人事業主としての事業廃止手続きを同時に行います。
事業廃止の手続きが完了した時点で実質的に事業の譲渡譲受の完了となります。
譲渡譲受認可申請を行った場合、車検証の書き換え後に譲渡譲受完了届を提出します。
譲渡譲受認可申請でも役員法令試験を受験し合格する必要があります。
標準処理期間は1〜3ヶ月となっていますが、譲渡譲受の完了までに4、5ヶ月かかることもあります。余裕を持ったスケジューリングを行うことが重要です。
法人設立登記と許可取得のタイミングに注意
法人を設立する際、登記完了後でないと許可申請・認可申請はできません。
また、法人が許可を取得するまでの間、個人名義のまま運送業を継続することはできますが、名義の混在に注意が必要です。
まとめ
個人事業主から法人への切り替えは、運送業にとって「大きな節目」となります。税務面のメリットだけでなく、許可制度や運行体制、社会保険など多岐にわたる手続きが求められるため、慎重な計画と専門家のサポートが重要です。
運送業の法人化を検討している方は、許可申請や名義変更、必要な届出について早めに確認・準備を進めることをおすすめします。

