飲食店を自宅で開業する際の注意点

自宅で飲食店を開業

「自宅の一部を使ってカフェを開業したい」「テイクアウト専門の小さなお店を自宅で始めたい」
そんな夢を持つ方が近年増えています。

副業や小規模開業のブームもあり、自宅を活用した飲食店は注目を集めていますが、飲食店営業には保健所の許可や法的な要件がしっかりと存在しています。

今回は自宅で飲食店を開業する前に必ず知っておきたい重要なポイントを解説していきます。

目次

自宅で飲食店を開業できる条件

まず最初に知っておきたいのは、「そもそも自宅で飲食店営業ができるのか?」という点です。

結論から言えば、条件を満たせば可能です。
しかし、次のような条件が関係してきます。

飲食店営許可が必要

自宅であっても有償で飲食物を提供するには、管轄の保健所から飲食店営業許可を取得する必要があります。

この許可を得るためには、以下のような設備要件を満たす必要があります。

  • 洗浄設備
  • 給水設備
  • 手洗い設備
  • 食品等保管設備
  • 専用の調理場(自宅の台所と兼用は不可
  • トイレ・更衣場所

飲食店を自宅で開業する場合であっても、食品衛生法に基づく飲食店営業許可の設備要件を満たす必要があります。

特に自宅で飲食店を開業するには、自宅の台所と店側の調理場は分ける必要があることに注意が必要です。

食品衛生責任者の配置

飲食店を自宅で営業するとしても、「食品衛生責任者」は配置しなければいけません。

食品衛生責任者とは、食品の製造・加工・調理・販売において衛生管理を行う責任者です。
食品を提供する飲食店では、「食品衛生責任者」を営業施設ごとに専任の食品営業責任者を配置しなければなりません。

食品衛生責任者の資格は、各自治体が実施する「食品衛生責任者養成講習」を受講し、確認試験に合格することで取得することが可能です。

建築基準法と用途地域

飲食店の店舗はどこの場所でも始めることができるわけではありません。
自宅で営業を始める前に、その場所でそもそも飲食業ができるかどうかを確認する必要があります。

用途地域とは、都市計画法で土地の用途を13の地域に分け、それぞれどのような建物を建てられるかを定めているものです。(参考:大阪府 用途地域による建築物の用途制限比較表

一般店舗型の飲食店を経営する場合、「工場系」「商業系」の地域では、おおむね飲食店の店舗を建てることが可能です(工業専用地域では不可)

しかし、気をつけないといけないのが「住居系」の用途地域です。

第1種低層住居専用地域では、店舗型の飲食店を開業することはできません。
店舗兼住宅であっても、店舗の床面積に制限があります。

自宅で飲食店を始めたい場合、まず初めに自宅の用途地域を確認する必要があります。

用途地域ごとの飲食店開業条件

住居系の用途地域の自宅で飲食店を開業する際の条件は以下のものがあります。

第一種低層住居専用地域
 • 店舗兼住宅で、店舗床面積が50㎡以下かつ建物の延べ床面積の2分の1未満のもの。
 • 厨房における機械の出力は0.75KW以下

第二種低層住居専用地域
 • 店舗部分の床面積が150平方メートル以下
 • 店舗部は2階以下に設けること
 • 厨房における機械の出力は0.75KW以下

必要な手続きと許可

自宅で飲食店を開業する場合、取得すべき許可や提出すべき届出は複数あります。

保健所での営業許可

前述の通り、飲食店営業許可が必須です。

飲食店営業許可を取得するには、食品衛生責任者の資格も必要になるので、持っていない場合、各自治体が実施する「食品衛生責任者養成講習」を受講し、確認試験に合格する必要があります。

飲食店営業許可に必要な要件はこちらの記事で解説しています。併せてご覧ください

消防への防火管理者選任届

防火管理者とは、火災による被害を防止するため、消防計画の作成や消防設備の管理を行う責任者のことです。

収容人数が30名以上となる規模の飲食店には防火管理者の設置が義務付けられています。
防火管理者の申請は、管轄の消防署に「防火管理者選任届出」を提出することで行います。

収容人数(従業員も含めて)が30名未満の場合、防火管理者の設置は必要ありません。

税務署に開業届の提出

個人事業主として飲食店を開始する場合、事業を開始した日から1ヶ月以内に管轄の税務署に開業届を出す必要があります。

また、青色申告をしたい場合は「青色申告承認申請書」も提出しておきましょう。

自治体によって必要な手続き

建物の用途変更が必要になる場合や、消防設備に関する届出が必要なこともあります。

この辺りは自治体ごとに異なるため、事前に市区町村の窓口に相談することが重要です。

まとめ

自宅で飲食店を開業するのは夢のあるチャレンジですが、実際には様々な法的・制度的な制約があります。
しかし、それらをクリアすれば、低コストで自分らしい飲食店を始めることも十分可能です。

当事務所では、行政書士として、開業前の手続きや許認可の取得サポートを行っています。
「うちはそもそも開業できるの?」「保健所の基準に合っているか不安…」
そんなお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。

夢の一歩を、確かな法的知識でサポートいたします。

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