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【相続問題】預貯金の払戻し制度とは

預貯金の払戻し制度

『亡くなった親の銀行口座が凍結されて預金が下ろせない』『遺産分割協議で揉めて遺産のお金をずっと下ろせない』といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

実際に相続になっていなくても、『親が亡くなったら預金を下ろせなくなるのではないか』『配偶者の方が亡くなり、預金を下ろせなくなったら支払いをどうしよう』と不安に思っている方も居られることでしょう。

この記事では、遺産分割前に預貯金を下ろす制度について解説します。

この記事を読んで欲しい人

相続発生後の銀行口座について知りたい方

 

相続が発生すれば預貯金口座は凍結される

被相続人の預貯金口座は、被相続人の死亡を知らせた時点で凍結されることになります。
要は、預貯金を引き出したり、名義を変更したりすることができなくなるということです。

相続が発生し、遺言書がない場合、遺産分割協議が行われることになりますが、遺産分割が終了するまで、相続人単独では預貯金の払い戻しはできません。被相続人の預貯金は遺産分割の対象となるからです。

よって、被相続人の財産から葬儀費用などを捻出したくてもできず、相続人の資産で払わなければならないとなってしまいます。

それでは、相続人の方に負担がかかってしまいますし、葬儀費用などを捻出できない可能性もあるかもしれません。
そこで、遺産分割前であったとしても、一定額であれば相続人単独で預貯金を引き出すことを可能にしたのが「預貯金の払戻し制度」です。

遺産分割前の預貯金の払戻しには2つの制度が設けられています。

①遺産分割前における預貯金債権の行使(民法909条の2
②遺産分割前の預貯金債権の仮分割の仮処分(家事事件手続法200条3項

遺産分割前における預貯金債権の行使

遺産分割前における預貯金債権の行使とは、家庭裁判所での手続きや判断を経ずに、一定額の払戻しを認める制度です。

遺言書がなく、遺産分割前であったとしても、相続人単独で預貯金の払戻しを請求することができます。
一定額というのも以下のように定められています。

①相続開始時の預貯金債権額の3分の1に各共同相続人の法定相続分を乗じた金額
②同一の金融機関からは150万円が限度

同一の金融機関から150万円が限度というのは、普通口座と定期口座に預貯金があったとしても、合計で150万円までということになります。

具体例を交えて、相続開始時の預貯金債権額の3分の1に各共同相続人の法定相続分を乗じた金額と、同一の金融機関から150万円が限度ということを解説します。

払戻し制度の例
妻の払い戻しの例
長男の払戻し

このように、預貯金額と法定相続分の割合によって、遺産分割前の払戻し金額に差が生まれることがお分かりいただけるかと思います。

遺産分割前に共同相続人の一人が払戻しを受けた預貯金債権は、その者が遺産の一部を分割により取得したものとみさなされます。

遺産分割前の預貯金の払戻し制度では、いくらでも払戻しできるわけではない

遺産分割前の預貯金債権の仮分割の仮処分

遺産分割前の預貯金債権の仮分割の仮処分とは、遺産分割の調停や審判が家庭裁判所で行われている中で、共同相続人の一人から申し立てがあった場合、相続債務の弁済や相続人の生活費などの事情により、家庭裁判所が仮払いの必要があると判断したとき、他の共同相続人の利益を害しない範囲で、預貯金債権の一部を仮に取得することができる制度です。

平成28年に最高裁判所大法廷決定で、預貯金は遺産分割の対象と明示されたものがあります。
遺産分割が完了するまでは、共同相続人全員の同意を得なければ権利を行使できないとされていました。

そうなると、被相続人の葬儀費用や相続人の生活費などで支障が生じてしまうなどの不都合が生じることになります。
遺産分割の調停や審判が行われていない状況であれば、遺産分割前の預貯金債権の行使を行えます。遺産分割の調停や審判が行われている状況であれば、遺産分割前の預貯金債権の仮分割の仮処分の申請を行う必要があります。

預貯金債権の仮分割の仮処分の申立てがあると、家庭裁判所は、共同相続人全員に対して、陳述を聴取する期日を通知して、直接に陳述を聴取するか、照会等に対する回答書を提出する形式で陳述を聴取するなどの手続を行うことになります。

預貯金債権の仮分割の仮処分の申立てをしてから、家庭裁判所での審判がなされるまでは、ある程度の期間を要することになります。

遺産分割の審判や調停をしている場合に預貯金債権の払戻しを受けようと思うと、預貯金債権の仮分割の仮処分の手続きが必要

遺産分割前における預貯金債権の払戻しに必要な一般的なもの

①預貯金情報などが確認できるもの
預貯金通帳や利用カードなど

②死亡の事実が確認できる書類
亡くなった預金者の戸籍謄本、除籍謄本

③相続員が誰なのかを特定できる書類
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍など

④相続人の生存と特定をする書類
相続人全員の戸籍謄本

⑤相続人であることを証明できる書類
預金の払戻しを希望する人の印鑑証明書

⑥相続手続依頼書
金融機関所定の相続手続依頼書。自署し実印での押印が必要

まとめ

遺産分割前の預貯金債権の払戻しに関して解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
『預金者が亡くなれば、預金口座が凍結されてお金が下ろせない』ということを聞いたことがある方も多い思います。

預金口座が凍結されてしまったら、配偶者の方が生活できなかったり、被相続人の葬儀費用を出せないといったことになってしまうかもしれません。

しかし、遺産分割前の預貯金の払戻し制度を利用すれば、遺産分割協議が終了するまでの間の資金を下ろすことができます。
遺産分割で揉めてしまい、家庭裁判所での調停や審判となれば、仮分割の仮処分の申立てを行えますが、審判が出るまでには時間を要することになってしまいます。

遺産分割で揉めることのないように、生前にいかに相続対策を行うことができるかが重要ではないでしょうか。

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