飲食店を開業するためには、保健所から「飲食店営業許可」を取得する必要があります。
しかし、すべてのケースでスムーズに許可が下りるとは限りません。
「図面も準備したし、設備も整えたのに不許可に…」
そんなトラブルを避けるためには、事前に「許可が下りにくいケース」や「不許可になる原因」をしっかり押さえておくことが重要です。
本記事では、飲食店営業許可が取得できない主な原因や、特に注意すべきポイントを行政書士の視点から解説します。
飲食店営業許可とは
「飲食店営業許可」は、食品衛生法に基づき、調理した食品をその場で提供する飲食店を営業する際に必要な許可です。
営業所の所在地を管轄する保健所に申請し、施設の基準や人員体制が整っていれば、原則として許可されます。
しかし、酒類の提供は午前0時までとされており、午前0時以降にも酒類を提供したい場合は「深夜酒類提供飲食店営業届」が必要になります。(※お酒を提供することを目的としない業態であれば深夜酒類提供飲食店営業届は不要)
また、店舗で飲食しない形態のテイクアウト専門店であったとしても、調理した食品を提供する場合には、飲食店営業許可が必要となります。
飲食店営業許可の取得が難しい主なケース
飲食店営業許可の取得にはさまざまな要件をクリアする必要があります。
許可申請しても取得が難しいケースには以下のものがあります。
- 衛生基準を満たさない店舗設計・設備
- 住宅をそのまま店舗として使用している場合
- 用途地域の制限により飲食店営業が禁止されている
- 欠格事由に該当する人物が申請している
- 営業許可を得るための必要書類が不備
それぞれ詳しく解説していきます。
衛生基準を満たさない店舗設計・設備
令和3年6年施行の改正食品衛生法では、調理場に必要な設備の要件が改正されました。
営業施設の基準は以下の条件になります。
項目 | 基準 |
---|---|
施設 | 施設は、屋外からの汚染を防止し、衛生的な作業を継続的に実施するために必要な構造又は設備、機能を備えるものとして次に掲げる基準に適合した衛生的な場所であること。食品を取扱う営業において、営業者は、食品等の取扱において、衛生管理により、露出しやすい状況における外部の汚染を防ぎ、工場若しくは営業施設の衛生を確保すること、又は必要な設備の設置、衛生管理を行うことが求められている。 |
区画 | ただし、作業における衛生又は保管等に著しい衛生の障害、同一区画を異なる作業で交互に使用する場合の不衛生等が明らかでない限り、区画を明確にすることが望まれる。なお、仕切り壁が無い営業施設において営業を行おうとする場合は、この限りでない。 |
汚染等防止 | 作業の過程において食品に汚染を及ぼすおそれのある物質又は廃棄物等の飛散、食品等の混入防止に十分な配慮がなされていること。 |
床・内壁・天井 | 床、内壁、天井は、清掃を容易に行うことができる材料で作られ、清潔を保持しやすいこと。 |
照明設備 | 必要な照度を有すること。 |
換気設備 | 換気設備は、不潔な空気、蒸気、煙、臭気等を屋外に排出し、清潔な空気を導入できる構造であること。 |
排水設備 | 排水が衛生上支障がないように適切に処理されるように設けられていること。 |
手洗設備 | 手洗い設備は、作業場等に設けられ、容易に使用できること。消毒設備や洗浄剤を備えること。 |
洗浄設備 | 器具・容器・食品等の洗浄のために必要な設備を備えること。 |
冷蔵冷凍設備 | 必要に応じて、法第13条第1項の規定又は法第18条の規定により冷蔵又は冷凍により保存しなければならない食品について、その温度に応じた冷蔵庫、冷凍庫その他これに類する設備を備えること。 |
保管設備 | 必要に応じて、器具・容器・包装資材等を衛生的に保管できる保管設備を備えること。 |
更衣場所 | 授業員人数に応じた更衣場所を、調理場への出入りが容易な場所につくること(更衣室は必須ではない。更衣室を設けない場合、脱いだ服や靴を入れておく更衣箱などを用意すること) |
トイレ | 従業員の数に応じて必要なトイレを作ること(客用トイレは必須ではなく、従業員・客の共有でも問題ない) |
廃棄物容器 | プラスチック製で蓋付きのゴミ箱を用意 |
令和3年6年施行の改正食品衛生法で大きく変わった施設基準は、「調理従事者の手指を洗浄消毒するための調理場内の流水式手洗い設備の水栓」がハンドル式では不可になったことです。

住宅をそのまま店舗として使用している場合
店舗兼住宅で飲食店を開業することは可能です。
住宅をそのまま店舗として使用することはできません。
自宅兼店舗の場合、住宅と店舗部分を明確に区分し、専用の厨房・手洗い・出入口を設ける必要があります。
住宅で飲食店を開業する際の注意点は、以下の記事でも詳しく解説いています。

用途地域の制限により飲食店営業が禁止されている
店舗の立地が「飲食店営業」に適していない場合、営業許可を取得できません。
用途地域とは、都市計画区域内で、土地の利用目的を定めるために、建築物の用途や容積率、建ぺい率などを制限する制度です。
独立店舗型(住居兼店舗ではない)飲食店では、低層住居専用地域では開業することができません。
欠格事由に該当する人物が申請している
欠格事由とは、特定の資格や地位に就くことができない、または特定の行為を行うことができないと法律で定められた事柄のことです。
以下の内容に該当するときは、都道府県知事は、飲食店営業許可を与えないことができると食品衛生法で定められています。
-
飲食店営業許可の欠格事由
- ①食品衛生法または同法に基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
- ②食品衛生法第59条から第61条までの規定により許可を取り消され、その取消しの日から起算して2年を経過しない者
- 法人の場合、その業務を行う役員のうちに①②のいずれかに該当する者があるもの
要は、過去に食品衛生法に違反し刑を受けた方や、営業許可を取り消されたことがある方は、飲食店営業許可の申請を行なっても、許可が下りないということです。
気をつけたいのが、法人として飲食店営業許可申請を行う場合、役員の全員が欠格事由に該当しないことが必要となります。
営業許可を得るための必要書類が不備
飲食店営業許可を取得するには、以下の書類が必要です。
-
飲食店営業許可取得に必要な書類
- 営業許可申請書1部(控えが必要な場合は2部)
- 施設の構造及び設備を示す図面・付近の見取り図 2部
- 食品衛生責任者の資格を証する書類(コピーで可)
- 法人の場合、登記事項証明書
- 水質検査成績書(井戸水や貯水槽など水道直結でない場合に必要、直近1年以内のもの)
店舗の図面には、施設の構造・設備を記載する必要があります。
また、水道直結でない水を使用する場合には、水質検査成績書も必要となります。
許可取得をスムーズに進めるためのポイント
保健所への事前相談を活用する
設備工事を行う前に、保健所に図面を持参して相談しましょう。
図面確認・現地指導を通じて、許可が取れないリスクを大幅に減らせます。
行政書士など専門家の活用
開業準備の段階から、行政書士などの専門家に相談することで、次のようなメリットがあります。
- 図面や設備のチェックを事前に行える
- 保健所対応を代行してもらえる
- 書類作成・申請手続きを正確に行ってもらえる
まとめ
飲食店営業許可は、店舗の立地・設備・営業者の資格など、多岐にわたる条件をクリアする必要があります。
不許可になってしまうケースの多くは、「事前確認の不足」が原因です。
「せっかく準備したのに開業できない…」とならないよう、事前にしっかり準備を進め、必要であれば専門家の力を借りるのがおすすめです。
お困りの方へ:行政書士による開業サポートもご活用ください
飲食店の開業・許可申請でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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