キッチンカー開業の流れと必要書類を行政書士がわかりやすく解説

キッチンカー開業の流れ

こんにちは。行政書士の勝浦です。
近年、初期費用を抑えて始められるビジネスとして「キッチンカー(移動販売車)」の人気が高まっています。
とはいえ、飲食を扱う営業にはさまざまな法律や許可が関わってくるため、「どこから始めたらいいのか分からない」というご相談も多く寄せられます。

この記事では、行政書士の視点から、キッチンカー開業までの流れと必要書類について、わかりやすくご紹介します。

目次

キッチンカー開業に必要な許可・届出

キッチンカーを始めるには、主に次の許可・届出が必要になります。

営業許可

キッチンカーで食品を提供するには、保健所の「営業許可」が必須です。
食品衛生法に基づき、各自治体の保健所で審査・許可を受ける必要があります。

キッチンカーの飲食店営業許可は出店地域を管轄する保健所」に申請を行います。

大阪府の場合、令和4年1月1日より一つの自治体で営業許可を取れば、大阪府内のどこでもキッチンカーで営業することができるようになりました。

例えば、堺市で営業許可を取得すれば、岸和田市でも出店が可能ということです。

大阪府に基地施設(自動車保管場所や仕込み場所など)があり、大阪府内でキッチンカー営業される場合、基地施設がある自治体の保健所に飲食店営業許可の申請を行うことになります。

ケース1
ケース2

ケース1の場合もケース2の場合も、大阪府内全域で営業することが可能です。

キッチンカーで必要となる営業許可には、社内で調理した商品を提供する「調理営業」調理済みの商品を販売するだけの「販売業」があり、それぞれで必要となる施設基準が異なりますので注意が必要です。

食品衛生責任者の設置の届出

営業許可を取得するには、営業所ごとに「食品衛生責任者」を置かなければなりません。

調理師や栄養士などの資格を持っていると食品衛生責任者になることができます。
調理師や栄養士などの資格がない場合は、各自治体が実施する「食品衛生責任者養成講習」を受講し、確認試験に合格する必要があります。

大阪府の場合、大阪府の指定を受けた「公益社団法人大阪食品衛生協会」が食品衛生責任者養成講習会を行っています。「公益社団法人大阪食品衛生協会HP(外部サイトへリンク)

営業開始までの具体的な流れ

営業開始までの流れ

では、具体的にどんなステップを踏んでいけば良いのか、時系列で見ていきましょう。

STEP
コンセプトの決定と販売計画の策定

まずは「どんな商品を、どこで、誰に提供するのか?」を明確にしましょう。

STEP
食品衛生責任者の資格を取得する

調理師や栄養士など、食品衛生責任者になれる資格を持っていない場合、養成講習会を受講します。

STEP
管轄の保健所に相談

出店地域または基地施設を管轄する保健所に事前相談を行います。

STEP
車両の準備

設備が保健所の基準を満たしているか要確認

STEP
営業許可の申請(保健所)

キッチンカーは管轄の保健所に持ち込み審査を受ける必要があります。

STEP
その他の必要な届出や手続き

開業届・PL保険・営業場所の確保/使用許可など

STEP
営業許可の取得・営業開始

許可証、1週間から10日程度で交付されます

コンセプトの決定と販売計画の策定

まずは「どんな商品を、どこで、誰に提供するのか?」を明確にしましょう。
これにより必要な設備や営業エリア、販売戦略が決まります。

考えるべき項目

■ メニュー(カレー/タコス/クレープなど)

■ 対象エリア(市内、地方のイベント、オフィス街など)

■ 営業日や時間帯

■ 必要設備(冷蔵庫、フライヤー、シンクの数)

キッチンカーで提供できる品目には給排水タンクの容量によって制限があります。
後からメニューを簡単に追加することはできないため、提供品目はきっちりと吟味する必要があります。

食品衛生責任者の資格を取得する

食品衛生管理者の要件を満たす資格を持っていない場合、都道府県知事等が行う講習会又は都道府県知事等が適正と認める講習会(食品衛生責任者養成講習会)を受講する必要があります。

食品衛生責任者養成講習会は1日で修了し、「食品衛生責任者手帳」が交付されます。
受講費用が約1万円前後かかります。

講習会は教室に集まって受ける受講のほか、e-ラーニングで受講することも可能です。

管轄の保健所に相談

自動車による飲食店営業(キッチンカー)では、「営業の種類」「品目の制限」「調理の工程」など、設備要件に関わる項目が多くあります。

希望しているキッチンカー営業を行うために何の設備が必要なのかを必ず確認する必要があります。
車を購入した後で、「希望する営業のための設備基準を満たさない」となってはどうしようもありません。

電話での確認だけではなく、アポイントをとって保健所に相談に行くことが成功の第一歩です。
保健所への相談は、少なくとも、提供したいメニュー」と「出店予定地」は決めてから行うようにしましょう。何も決まっていない時点では、保健所の担当の方もアドバイスすることができません。

車両の準備

キッチンカーには営業許可の基準を満たすための設備が必要となります。

必要となる設備には、「冷蔵庫・冷凍庫」「シンク・蛇口」「給排水タンク」「扉付きの収納棚」「照明器具」「換気扇」「間仕切り」があります。

営業許可の申請・必要な書類

営業許可の申請には以下の書類が必要になります。

    営業許可の申請に必要な書類
  • 営業許可申請書
  • 車両の図面(見取り図)
  • 使用する設備の一覧
  • 食品衛生責任者の資格証明書
  • 一次加工施設の許可証の写し(一次加工が必要な場合)
  • 登記事項証明書(法人の場合)
  • 水質検査成績書(水道水以外を使用する場合)

その他の必要な届出や手続き

キッチンカーの営業では、車両を移動させて営業を行うため、車両の保険は必要なのは当然ですが、P保険の加入も検討する必要があります。

PL保険とは、生産物賠償責任保険のことで、製造・販売した製品や仕事の結果が原因で、顧客に身体障害や財産損害が発生し、事業者が法律上の損害賠償責任を負う場合に、その損害を補償する保険です。

例えば、提供した商品が原因でお客さまが食中毒を起こしてしまった場合や、商品提供時にお客さまの服を汚してしまった場合の補償をしてくれる保険です。

まとめ:キッチンカー開業は「準備が9割」

キッチンカー開業は、比較的低コストでスタートできる反面、許可取得や設備基準のハードルがあります。
ですが、事前にしっかりと計画し、必要な手続きや書類を一つずつ進めていけば、確実に開業できます。

「何から始めたらいいかわからない」「書類作成に不安がある」など、お困りごとがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
行政書士として、開業の夢をカタチにするお手伝いができれば幸いです。

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