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軽貨物運送事業における安全管理者選任制度改定のポイントと対応策

軽貨物の安全管理者

軽貨物運送事業において、営業所ごとに使用する事業用自動車が5台以上にならない場合には、「安全運転管理者」の選任は義務付けられていませんでした。

したがって、個人事業主や小規模事業の軽貨物運送事業者は、軽貨物運送の事業開始の届出を出せば、安全運転管理者を選任しなくても事業を開始・継続することができていました。

しかし、貨物軽自動車運送事業者の安全対策強化として、令和6年に法令改正、令和7年4月より安全管理者制度が創設されることとなります。

この記事では、安全管理者制度の創設により「軽貨物運送事業者にどのようなことが必要になっていくのか」を解説します。

貨物軽自動車運送事業の安全管理者選任制度とは?

安全管理者制度とは

軽貨物の安全運転管理者制度は、営業所ごとに事業用車両が5台以上になる場合に選任が必要となるものでした。
今回の改正では、台数に関係なく安全管理者の選任が必要となったわけです。

運送業における安全運転管理者とは、安全運転の確保を目的として選任される責任者のことです。

軽貨物運送事業の安全運転管理者の役割には以下のものがあります。

  1. 運転者が休憩又は睡眠のために利用することができる施設を適切に管理すること
  2. 定められた勤務時間及び乗務時間の基準の範囲内において乗務割を作成し、これに従い運転者を事業用自動車に乗務させること
  3. 酒気を帯びた状態にある運転者を事業用自動車の運行の業務に従事させないこと。
  4. 運転者の健康状態の把握に努め、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全に運行の業務を遂行できないおそれがある運転者を事業用自動車の運行の業務に従事させないこと。
  5. 過積載による運送の防止について、運転者に対する指導及び監督を行うこと
  6. 貨物の積載方法について、運転者に対する指導及び監督を行うこと
  7. 運転者に対して点呼を行い、報告を求め、確認し、指示を与え、その内容を記録して保存すること。また、運転者に対して使用するアルコール検知器を常時有効に保持すること
  8. 事業用自動車に係る運転者の業務について、運転者に対して記録させ、その記録を保存すること
  9. 事業用自動車に係る事故が発生した場合には、必要な事項を記録し、保存すること
  10. 貨物軽自動車運転者等台帳を作成し、営業所に備え置くこと
  11. 運転者に対する指導、監督及び特別な指導を行うとともに、記録し、保存すること
  12. 運転者に適性診断を受けさせること
  13. 異常気象その他の理由により輸送の安全の確保に支障を生ずるおそれがあるときは、運転者に対する適切な指示その他輸送の安全を確保するために必要な措置を講ずること。
  14. 国土交通大臣又は地方運輸局長から事故防止対策に関する通知があった際は、事業用自動車の運行の安全の確保について、運転者に対する指導及び監督を行うこと

安全管理者制度導入の背景

貨物軽自動車運送事業は、主に軽貨物車両を用いて荷物を運搬する業務を指します。

近年、EC市場の拡大により、宅配運送の需要の高まる中、軽貨物運送車両も平成28年から令和5年の5年間で30%以上も増加しており、宅配事業における軽貨物運送事業の貢献も大きくなっています。

しかし一方で、軽貨物運送車両による事故件数も右肩上がりとなっており、平成28年から令和5年の5年間で26%も増加しています。

このような背景から、事業者が安全管理者を選任し、安全運行を確保することが求められています。

改正前は、制度が適用される範囲が一部の事業者に限定されていましたが、改正後はすべての事業者が対象となる可能性が高まりました。

改正の背景には、交通事故件数の増加や運送業界全体の働き方改革があります。
軽貨物業界では個人事業主や小規模事業者が多く、安全管理体制が整っていないケースも少なくありません。
今回の改正は、こうした課題を解消し、安全性を向上させる目的で実施されます。

貨物軽自動車運送事業者に義務付けられる項目

  1. 貨物軽自動車安全管理者の講習受講
  2. 貨物軽自動車安全管理者の選任及び届出
  3. 初任運転者等への特別な指導及び適性診断の受診
  4. 業務の記録
  5. 貨物軽自動車運転者等台帳の作成
  6. 事故の記録
  7. 国土交通大臣への事故報告

貨物軽自動車安全管理者の講習受講

安全運転管理者の講習には、「貨物軽自動車安全管理者講習」と「貨物軽自動車安全管理者定期講習」の2つがあります。

「貨物軽自動車安全管理者講習」とは、安全運転管理者を選任する際に受講する講習です。
「貨物軽自動車安全管理者定期講習」とは、安全運転管理者が選任の日から2年毎に受けなければならない講習です。

POINT

安全運転管理者の選任には「貨物軽自動車安全管理者講習」を受講しなければならず、選任後も2年に1度の「貨物軽自動車安全管理者定期講習」の受講が必要

初任運転者とは何か

軽貨物運送事業における初任運転者とは、過去に特別な指導や適正診断を受けていない運転者をいいます。

営業所ごとに配置する事業用車両が5台未満の軽貨物運送事業者には安全運転管理者の選任義務がありませんでしたので、適正診断を受けてない運転者の方も多くいるのではないでしょうか。

軽貨物運送事業者は、「初任運転者」「過去に死者または重傷者を生じた交通事故を起こした運転者」「高齢運転者」などの特定の運転者に対し、特別な指導を行い、適正診断を受診させなければなりません。

貨物軽自動車安全管理者に選任できる人の条件

軽貨物運送事業の安全運転管理制度の改正において、安全運転管理者に選任できる人の条件は以下のものがあります。

  1. 貨物軽自動車安全管理者講習を選任の日前2年以内に修了した者
  2. 貨物軽自動車安全管理者講習を修了し、かつ、貨物軽自動車安全管理者定期講習を選任の日前2年以内に修了した者
  3. 当該事業者が一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業を経営している場合に、運行管理者として選任されている者

基本的には「貨物軽自動車安全管理者講習」を受講し、安全管理者の選任届を出すことが一般的な流れになるかと思われます。

2024年4月の安全管理者制度改正で軽貨物運送事業者が行うこと

それでは、実際に軽貨物運送事業者(個人事業主を含む)が、令和7年4月の法令改正後に具体的に何をしなければならないのかを見ていきましょう。

1. 安全管理者の選任基準を確認する

まず、改正内容を正確に理解し、自社の事業規模や運行形態に応じた安全管理者を選任しましょう。
選任には、事業所ごとに必要な基準を満たす人材を確保する必要があります。

令和7年3月までに貨物軽自動車運送事業届出を行なった事業者は、令和9年3月までに安全運転管理者の選任をする必要があります。

貨物軽自動車安全運転者講習の受講

軽貨物運送事業者は安全運転管理者に選任しようとする人に貨物軽自動車安全管理者講習を、国土交通大臣の登録を受けた講習機関で受講させなければなりません。

安全管理者選任の届出

安全管理者の選任は運輸支局を通じて国土交通大臣への届出が必要となります。

届出には「貨物軽自動車安全管理者講習修了証明書」または「貨物軽自動車安全管理者定期講習修了証明書の写し」の添付が必要となります。

初任運転者等への指導及び適正診断の受診

初任運転者(過去に一度も特別な指導・適正診断を受けていない者)・高齢者(65歳以上の者)・死者又は負傷者が生じた事故を引き落とした者に対して特別な指導を実施しなければなりません。

また、国土交通大臣に認定された機関での適正診断の受診も必要となります。

令和7年3月31日までに貨物軽自動車運送事業経営届出を行なっている事業者は、令和10年3月31日までに初任運転者に対して適正診断を受講させる必要があります。

令和7年3月31日までに事業を行なってる軽貨物運送事業者は、特定の運転者(初任運転者のみ)に対する指導も適正診断と同様に、令和10年3月31日までに特別な指導を行う必要があります。

特定の運転者に対する特別な指導は、実施した「日時」「場所」「内容」「指導を行なった者」「指導を受けた者」を記録する必要があります。

指導の記録は、書面または電磁的な方法により記録・保存を行います。

業務記録の作成・保存

業務記録とは、事業用運転者などの業務について、業務の日時や開始・終了・経過地点、休憩などを運転者毎に記録したものです。
いわゆる業務日報のことです。

業務記録に記載しなければいけない事項は主に次のものがあります。

  1. 運転者等の氏名
  2. 運転者等が従事した運行の業務に係る事業用自動車の車両番号
  3. 業務の開始及び終了の地点、日時、主な経過地点、業務に従事した距離
  4. 業務を交替した場合、その地点及び日時
  5. 休憩または睡眠をした場合、その地点及び日時
  6. 運転者等が従事した運行の業務に係る事業用自動車の車両番号

業務記録は、1年間の保存が必要となります。

事故記録の作成・保存

事故記録には次のものを記録する必要があります。

  1. 乗務員等の氏名
  2. 事業用自動車の車両番号
  3. 事故の発生日時
  4. 事故の発生場所
  5. 事故の当事者(乗務員等を除く)の氏名
  6. 事故の概要(損害の程度を含む)
  7. 事故の原因
  8. 再発防止対策

事故の記録は事故を発生させた車両の運行を管轄する営業所において、3年間保存する必要があります。

国土交通大臣への事故報告

「死傷者を生じた」などの一定以上の事故を発生させた場合、管轄の運輸支局を通じて国土交通大臣への報告義務があります。

事故報告書の提出は、一部の事故をを除き、事故があった日から30日以内となります。

また、24時間以内においてできるだけ速やかに、電話その他の必要な方法により管轄する運輸支局等に報告が必要となる事故もあります。
事故速報が必要な主な事故には以下のものがあります。

  1. ● 2人以上の死者を生じたもの
  2. ● 5人以上の重傷者を生じたもの
  3. ● 10人以上の負傷者を生じたもの
  4. ● 酒気帯び運転を伴うもの
  5. ● 脳疾患、心臓疾患及び意識喪失に起因すると思われるもの

まとめ

貨物軽自動車運送事業の安全管理者選任制度改正は、業界全体の安全性を高める重要な一歩です。

軽貨物運送事業を経営されている方だけでなく、軽貨物運送事業に関わるすべての人が理解することが重要です。

事業者としては、改正内容を正しく理解し、迅速かつ適切な対応を行うことが求められます。
安全管理者の選任や教育、内部体制の見直しを通じて、安全で効率的な運行を目指すことができるのです。

2025年の新制度開始により、軽貨物運送事業の安全運転管理者の選任は、2027年3月までに行う必要があります。

安全運転管理者を選任しない場合、事業を継続することができないため、忘れずに安全運転管理者の選任を行うことが必要です。

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