飲み会が増える季節や地域の交通事情によって需要が高まる「自動車運転代行業」
自動車運転代行業を営むには、主たる営業所を管轄する公安委員会の認定を受けなければなりません。
しかし、開業を考えている人の中には、何を準備し、どのような手順で公安委員会への認定(許可)を受ければよいのか不安に感じることが多いはずです。
本記事では、認定の要点・申請の流れ・必要書類(個人/法人別)・注意点を、行政書士の視点で実務的にわかりやすく解説します。
自動車運転代行業とは
自動車運転代行業とは、利用者が所有する車両の代行運転サービスを提供する事業のことです。
利用者がお酒を飲んだ後などに利用されることが多いサービス事業です。
「自動車運転代行業」を始めるには、営業所を管轄する警察署を通して公安委員会の認定を受ける必要があります。
よく混同されるのに、「旅客自動車運送事業」がありますが、旅客自動車運送事業は「許可制」、自動車運転代行業は「認定制」であり、大きな違いがあります。
旅客自動車運送事業と自動車運転代行業の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています
自動車運転代行業に必要な要件
自動車運転代行業の認定を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。
- 欠格事由に該当しないこと
- 損害賠償措置に関すること
- 安全運転管理者の選任
- 最低2名体制(一人は二種免許の所持が必要)
それぞれ詳しく解説します。
自動車運転代行業の欠格要件
次のいずれかに該当する方は、自動車運転代行業を営むことはできません。
- ① 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- ② 次の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者
(1)禁錮以上の刑に処せられた者
(2)次により罰金の刑に処せられた者
・自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の規定に違反した者
・道路運送法に規定する無許可道路運送事業(白バス、白タク等)に違反した者
・道路交通法に規定する自動車の使用者等の義務等(下命・容認、自動車の使用制限命令)に違反した者 - ③ 最近2年間に自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の規定による営業停止命令、営業廃止命令等に違反する行為をした者
- ④ 暴力団関係者
- ⑤ 精神機能の障害により自動車運転代行業の業務を適正に実施するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
- 利用者等に対する損害賠償措置が次の基準に適合すると認められない者
- 安全運転管理者、副安全運転管理者を選任しない者
- 法人で、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者)のうちに、上記の①から⑤の事項のいずれかに該当する者があるもの
上記の欠格要件に該当する場合、認定拒否の処分がされるため、自動車運転代行業を営むことができません。
また、認定申請時に支払った認定申請手数料は認定拒否されると返金されません。
自動車運転代行業を開業するには、欠格要件(開業できない人の要件)があることに注意が必要です。
損害賠償措置に関すること
損害賠償措置は、利用者の自動車を運転中に事故を起こした場合の損害に対する賠償措置としての保険の締結であり、国土交通省の規則等により
対人8,000万円 対物200万円 車両200万円
を最低保障額として満たしていなければなりません。
安全運転管理者の選任
安全運転管理者とは、事業所において一定台数以上の自動車を使用する際に、法律で選任が義務付けられている管理者です。
従業員による交通事故を防止し、道路交通法令を遵守するための教育や運転状況の把握など、安全運転に関する管理業務を担います。
自動車運転代行業の場合、認定の要件で安全管理者の選任が義務付けられています。
したがって、車1台の使用でも安全運転管理者の選任が必要となります。
安全運転管理者を選任しなかった場合には、「50万円以下の罰金」を課されます。
- 20歳以上
- 自動車の運転の管理に関し2年以上の実務経験を有する
- 欠格事項に該当しない
- 過去2年以内に都道府県公安委員会による安全運転管理者等の解任命令を受けた者
- 次の違反行為をして2年経過していない者
- 酒酔い・酒気帯び運転
- 麻薬等運転
- 妨害運転
- 無免許運転
- 救護義務違反
- 飲酒運転に関し車両等を提供する行為
- 酒類を提供する行為及び要求・依頼して同乗する行為
- 無免許運転に関し自動車等を提供する行為及び要求・依頼して同乗する行為
- 自動車の使用制限命令違反
- 次の違反を下命・容認してから2年経過していない者
- 酒酔い・酒気帯び運転
- 麻薬等運転
- 妨害運転
- 無免許運転
- 過労運転
- 大型自動車等の無資格運転
- 最高速度違反
- 積載制限違反運転
- 放置駐車違反
- 安全運転管理者選任届出書
- 戸籍抄本または本籍の記載がある住民票の写し
- 運転免許証の写し
- 運転記録証明書(過去3年間または5年間の記録)
- 実務経験証明書
安全運転管理者の選任に必要な書類は都道府県により多少異なりますので、事前に確認が必要です。
申請に必要な書類
個人申請の場合に必要な書類は以下のものです。
- 認定申請書
- 住民票の写し
- 誓約書
- 精神機能の障害に関する医師の診断書
- 損害賠償措置を証する書類
- 安全運転管理者等の要件を備えていることを証する書類
- 未成年者登記事項証明書(民法の規定により営業を許された未成年者の場合)
法人申請の場合には以下の書類が必要になります。
- 認定申請書
- 住民票の写し(役員全員分)
- 誓約書(役員全員分)
- 精神機能の障害に関する医師の診断書<(役員全員分)
- 損害賠償措置を証する書類
- 安全運転管理者等の要件を備えていることを証する書類
- 役員名簿(役員全員の氏名及び住所が記載されたもの)
- 定款又はこれに代わる書類
申請前にチェックしておくこと
-
事業形態の決定
- 個人事業主で始めるか法人で始めるかを明確にします。法人の場合は登記事項証明書や定款が必要です。 車両と保険の準備
- 随伴車1台ごとに保険への加入が義務付けられています。最低補償額がありますので注意が必要です。 安全運転管理者等の体制
- 安全運転管理者の選任や、その資格認定に必要な書類を準備する必要があります。 営業所の確保
- 個人開業の場合、自宅を営業所にすることも可能です。
定款の変更が必要なケース
法人の場合で、定款の目的に「運転代行業」などの記載がなければ、定款変更を行い登記しなければいけません。
- 自動車運転代行業
- 運転代サービスに関する事業
- 自動車運転代行に関する事業
株式会社の場合、定款の変更には「株主総会の開催」などの手続きが必要で、ある程度の時間を要します。
また、法務局への変更登記申請を行ってから登記が完了するまでにも、通常1〜2週間ほどかかります。
そのため、希望する開業日から逆算して、余裕をもって準備を進めることが大切です。
申請の主な流れ
「安全運転管理者は選任のときから15日以内に届出なければならない」とされていますが、自動車運転代行業の認定申請前に選任が必要な場合があります。各都道府県の警察に事前に確認が必要です。
提出書類には医師の診断書など、取得に時間を要するものもあります。
申請しようとする日から逆算して計画的に書類の準備を行う必要があります。
運転代行事業では、随伴車1台ごとに共済保険や損害賠償保険に加入することが義務付けられています。
提出書類には医師の診断書など、取得に時間を要するものもあります。
申請しようとする日から逆算して計画的に書類の準備を行う必要があります。
認定の申請先は、主たる営業所を管轄する警察署になります。
認定申請手数料12,000円が必要となります。※認定手数料は認定が下りなかった場合でも返金されません。
自動車運転代行業の標準処理期間は45日間です。
申請してから不備がなく認定が下りるまで2ヶ月はかかると思っておきましょう。
まとめ
自動車運転代行業は、初期費用を抑えて始められるうえ、他の事業との兼業がしやすく、安定したニーズがあることが大きな魅力です。
一方で、開業にあたっては公安委員会への認定申請や各種書類の準備など、専門的な手続きが必要になります。
「何から始めればいいのか分からない」「書類の書き方に不安がある」と感じる方も少なくありません。
運転代行業の開業をスムーズに進めるためには、行政書士などの専門家に相談して、手続きを確実に進めることをおすすめします。
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