被相続人に相続人が居れば、包括承継主義により、相続財産は相続開始と同時に相続人に帰属することになります。
では、遺産を相続する身内も財産を残したい知人も居ない場合、相続財産はどうなってしまうのでしょうか。
この記事では、遺産を相続させる親族が居ない場合、財産がどうなってしまうのかについて解説します。
相続財産法人
相続人がいることが明らかでない場合、相続財産は、被相続人の死亡時において、法律上当然に法人となります。
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする
民法951条(相続財産法人の成立)
『財産を法人とするってどういう意味?』と感じられると思います。
本来の財産の帰属主体は相続人で、相続財産を管理・精算するのも財産の帰属主体となる相続人となります。
相続人がいることが明らかでない状態でも財産の帰属主体は「後から現れるかもしれない相続人」となりますが、その存在が明らかとならない間は相続財産を管理する人がいないという状態になってしまいます。
そこで、相続財産を帰属主体と分離させた特別財産として、独自に管理する必要があります。
そのため、相続財産自体に法人格を付与するということです。
相続財産法人が成立すると、利害関係人(受遺者や特別縁故者など)または検察官の請求により、家庭裁判所が相続財産の精算人を選任することになります。
特別縁故者
相続人がいないことが確定した場合、特別縁故者がいるときは、その者が家庭裁判所に対して財産分与を請求し、認められればその者に財産の全部または一部が分与されることになります。
特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者をいいます。
特別縁故者に該当するかどうかは、何らかの親族関係の有無によってではなく、密接な事実関係の有無によって判断されます。
特別縁故者は、相続人捜査の公告期間の満了後3ヶ月以内に、財産の分与を請求しなければなりません。
特別縁故者として、内縁の妻や養子、付き添いの看護師や老人ホームが認められた事例もあります。
国庫に帰属する
特別縁故者からの財産分与の請求もない、または特別縁故者からの財産分与請求があったが家庭裁判所により認められなかった場合、特別縁故者に財産分与しても残余財産がある場合、残余財産は国庫に帰属することになります。
要は、人が死亡した場合において、法律上の相続人がいないことが確定すると、相続財産は最終的には国庫に帰属してしまうことになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
この記事では、身寄りのない方が亡くなった場合、その方の財産は最終的にはどうなるのかについて解説してきました。
ご理解いただけた通り、財産を引き継ぐ人が居なければ、最終的には国のものとなります。
特別縁故者に財産が渡る可能性もありますが、特別縁故者からの請求が必要であり、家庭裁判所に認められるかどうかのハードルもあります。
身内がいないが、『世話になった看護師さんに財産を譲りたい』や『国に持っていかれるぐらいなら世話になった近所の方に財産を譲りたい』などと思う方は、遺言書の作成が必要です。